呉・広島の旅

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#06

旧呉海軍の遺産巡り〈後編〉

編・『TABILISTA』編集部

 

入船山記念館と周辺散策

 呉探訪ループバスに乗って旧海軍遺産を巡るミニツアー。後半は入船山公園エリアへ。ここには、本連載#01、#02で紹介した呉市立美術館もある。

 

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入船山は、路線バス、ループバスも停まるバス停「国立病院」で下車するとすぐ

 

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入船山記念館(入船山公園)の入口

 

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案内図。木々も多く、のんびり散策するのもいい

 

 入船山にはかつて呉浦の総氏神である亀山神社があったが、明治時代、呉に海軍鎮守府が設置されることになり、神社は少し奥まった場所へ移された。その跡地に軍政会議所が建てられ、やがて呉鎮守府司令長官官舎になる。建物は明治38年の芸予地震で被害を受け、イギリス様式を備えた和洋併設の平屋に建て替えられた。その後も歴代の司令長官の官舎として使われていたが、戦後、連合国軍司令官舎となり、建物は色を塗り替えられ、内装も様々な改造がなされてしまったという。

 昭和31年、日本政府に返還。さらにこの入船山一帯含めて、昭和41年に呉市へ譲与された。平成に入って、老朽化した司令長官官舎は大がかりな調査、復原修理が行われ、建築当時の姿へと蘇った。

 洋館部の外観はイギリス風ハーフティンバー様式といって、柱などの木材を外部に見せる構造を取り入れている。建物内部は、壁や天井に使われていた豪華な高級壁紙「金唐紙(きんからかみ)」5種類が復原されるなど、国内でも貴重な明治時代の建築や内装を見学することができる。

 

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旧呉鎮守府司令長官官舎。正面は洋館部で公的な場所として使われていた

 

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官舎の裏手に回ると和館部の日本家屋が現れる。司令長官とその家族の住居に使われていた

 

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屋根に使われている石は、東京駅丸の内駅舎にも使われている宮城県雄勝産の天然スレート

 

 司令長官官舎は平成10年に国の重要文化財に指定されている。記念館の敷地内には、ほかにも様々な文化財や史料が移設・移築されている。旧東郷家住宅離れ(国登録有形文化財)や、復原された金唐紙に関する資料展示なども、とても興味深かった。

 

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旧呉海軍工廠塔時計。工廠の屋上にあった塔時計で、戦後に公園入口近くに移された。現在も動いている(市有形文化財)

 

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番兵塔。警備のため、官舎や軍施設の入口に建てられていた

 

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ボランティアガイド詰所の建物のレンガは、初代呉鎮守府庁舎に使われていたもの

 

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総石造りの旧高烏砲台火薬庫(国登録有形文化財)

 

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大砲の砲身

 

 入船山記念館の見学を終えて、門を出る。美術館通りを挟んで反対側にある入船山公園多目的広場(市民広場)は、かつて軍の練兵場(兵士の訓練場)だった。今は野球場やサッカー場など、運動公園として使用されている。さらにこの先には、旧呉鎮守府庁舎、現在の海上自衛隊呉地方総監部第一庁舎がある。

 

 

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路線バスのバス停「入船山公園」。ループバスなら隣のバス停「国立病院前」へ

 

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広々とした市民広場。かつて軍の練兵場だった

 

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歴史ある呉鎮守府庁舎の建物。現在は呉総監部の庁舎として使われている(写真/呉観光協会)

 

 

 平成28年、呉市の鎮守府や軍港の歴史物語は、「鎮守府 横須賀・呉・佐世保・舞鶴~日本近代化の躍動を体感できるまち~」として、ほかの3つの市(横須賀、佐世保、舞鶴)とともに、文化庁の日本遺産に認定された。


 美術館通りまで戻って、点在する彫刻を見ながらゆっくり坂を下っていく。呉市立美術館の隣にある建物は、旧呉海軍下士官兵集会所だ(現在は海上自衛隊呉集会所)。今は落ち着いた文化的なエリアだが、かつては呉海軍の敷地内。日々、多くの軍人や軍関連の施設で働く人たちが、忙しく行き交ったであろう。『この世界の片隅に』にも描かれている、激動の時代を生きた彼らとその家族の毎日の暮らしを想像してみる。

 

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「日本の道100選」にも選ばれている美術館通り

 

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バス停「眼鏡橋」。赤い壁の建物が旧海軍の集会所

 

 美術館通りから、広い国道へと出る。この近くにはかつて眼鏡橋という石橋があった。軍用道路を造るために地下に埋められ、眼鏡橋の名だけが、鉄道の高架がかかる交差点に残っている。

 このまま呉駅方面まで歩いてもよかったのだが、せっかくバスの一日乗車券を持っているので、「眼鏡橋」バス停から再びバスに乗ることにした。気がつけば夕刻も近づいて、お腹も空いてきた。朝から出歩いて昼食も食べ損ねていたので、そろそろガス欠だ。ひとまず宿に戻ってから、呉の街に美味しいものを探しに行こう!

 

 

*『入船山記念館』公式HP→http://irifuneyama.com/

『入船山記念館』では、開催中の企画展「軍港・呉のメインストリート」関連イベントとして、「まちなか写真展」を開催中だ(~12月23日まで)。「呉のまちは、どのようにしてできたのか」を、まちなかに展示されている明治・大正・昭和初期の写真を巡りながら、楽しむことができるこのイベント。詳細な解説つきの「呉まちあるきmap」は、『入船山記念館』や呉市内で配布されているほか、『入船山記念館』HPからもダウンロードできる。イベント期間中に呉を訪れる人は、ぜひマップ片手に、呉の歴史を辿ってみてはいかがだろうか。

 

*呉の観光情報はこちら→呉観光協会HP→https://www.kure-kankou.jp/

 

 

 

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©こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会

 

 

*本連載は週1回(毎週月曜日)配信予定です。次回もお楽しみに!

 

 

 

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