日本全国 相撲めしツアー!

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#06

『モンゴル料理 ウランバートル』

文・武田葉月

モンゴル出身、元幕内力士・白馬の店

 白鵬、稀勢の里、鶴竜の3横綱が初日から休場するという異例のスタートとなった大相撲秋場所。
 その後、期待の大関・髙安、照ノ富士も休場となったものの大関・豪栄道の快進撃などもあり、優勝争いは豪栄道が中心となって進んでいきました。ところが千秋楽の本割で、4敗の横綱・日馬富士が3敗の豪栄道を破って優勝決定戦に持ち込むと、日馬富士は決定戦を制し、奇跡的な大逆転V。まさに横綱の執念を見せた、日馬富士の9回目の優勝でした。
 平成13年初場所で初土俵を踏んだ日馬富士は、今年力士生活16年目。その日馬富士より1年早く初土俵を踏んだのが、現在、東京・両国でモンゴル料理店『ウランバートル』を営んでいる、元幕内力士の白馬さん(本名・アリオンバヤル・ウヌルジャルガル)です。
 現役時代は、長身からの四つ相撲で前頭5枚目まで昇進。当時、大関だった日馬富士、琴欧洲を破るなどの活躍を見せました。
 一般的にモンゴル出身の力士というと、父親がモンゴル相撲の力士だったり、本人がモンゴル相撲や柔道などを経験した人が多いのですが、白馬さんの場合は本人や親族もモンゴル相撲の経験はなかったと言います。
「学生の頃、両親が仕事で多忙だったこともあって、ヤンチャしていた時期があったんです(笑)。『厳しい世界で修業したほうがいいんじゃないか』という父親の意見があって、選ばれたのが日本の大相撲界への道でした。僕自身も日本への憧れがあったので、相撲の世界に進みましたが、想像以上に厳しい世界でしたね。同期生の朝赤龍(現・錦島親方)は入門2年ちょっとで十両に上がりましたが、僕は7年かかりましたからね(笑)」
 モンゴル人力士のパイオニア・旭鷲山、旭天鵬の活躍はもちろんのこと、第2世代の朝青龍、朝赤龍の躍進で、平成20年頃にはモンゴル人力士は30人を超える角界の一大勢力となっていました。その頃、白馬さんの母親(エンフトヤさん)は来日し、飲食業に従事していましたが、「モンゴル人力士たちに、家庭料理を振る舞いたい」という気持ちから始めたのが、『ウランバートル』でした。
 平成20年6月にオープンした店には、「家庭の味」を求めるモンゴル人力士たちで賑わい、気軽に本場のモンゴルの味を堪能できるとあって、一般のお客様にも評判は上々。
 平成23年4月、現役を引退した白馬さんも、平成25年から母親と一緒に店を切り盛りしています。

 

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JR両国駅から徒歩2分ほど、京葉道路沿いにある『ウランバートル』。店の前で、白馬さんと母・エンフバトヤさん。

 

『ウランバートル』の看板メニューは、なんと言っても、骨付き塩茹で肉。文字通り、骨付きの羊肉を塩茹でした豪快な一品です。羊肉はナイフで切り分けて、ニラ塩ダレ、秘伝の肉ダレでいただきます。

 

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付け合わせのジャガイモ、ニンジン、玉ねぎと共に。骨付き塩茹で肉3800円。

 

 ほとんどのお客様が注文するというボーズは、小麦粉ベースの皮で羊のひき肉を包んで蒸した、餃子や小龍包のような、モンゴルを代表する料理です。お好みでチリソースを付けて食べても、またおいしい! アツアツの肉汁をこぼさないように。

 ピロシキのモンゴル版とも言えるホーショールも、モンゴルの伝統料理の1つ。具は羊肉、牛肉から選べます。

 

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ボーズ、1個120円。

 

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ホーショール、1個250円。

 

 肉料理が続いた後は、あっさりとしたニンジンサラダがおすすめ。

 

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ニンジンサラダ、500円。

 

 さて、モンゴルのアルコールと言えば、モンゴルウォッカです。『ウランバートル』には、アルコール度数39度のチンギスなど、さまざまなウォッカが並んでいます。もちろん、ウォッカ以外にも、生ビールや日本の焼酎、ワインなども取り揃えてあるので、ご安心を。

 

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モンゴルウォッカ各種、グラス800円、ボトル6000円。

 

 また、冬期間はマイナス30度に冷え込むモンゴルで、体をあたためるスープは必需品です。
 バンシ(肉入り野菜スープ)は、野菜スープにモンゴルのゆで餃子「バンシ」を入れたアツアツのスープ。

 

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バンシ、980円。

 

 平成23年4月に引退した白馬さんは、同年6月、東京都内で断髪式と結婚披露宴をおこないました。奥様のオユンナさんは、幕内・時天空(のち間垣親方=故人)の妹で、現在は3人の子供にも恵まれています。
 店内には白馬さんの現役時代の髷が飾られています。

 

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店内に飾られている現役時代の髷。

 

 さて、日本で味わえる「モンゴルの家庭の味」で癒されたモンゴル人力士たちは、次々に出世を果たし、家庭を持つようになっていきました。
 今でも横綱・白鵬、元旭天鵬の友綱親方らが訪れるほか、唯一のエジプト人力士・大砂嵐も顔を見せるそうです。
「僕が十両に昇進した時、110キロ。MAXでも128キロと軽量でした。だから、里山(現・幕下)などの、細身の力士にがんばってもらいたいという気持ちが強いですね。
 相撲界で12年間過ごしてよかったことは、日本語を覚えたことと、日本の知人が全国にできたこと。それが僕の誇りです」
「今後は、ラムチャンコもメニューに加えたい」と意欲的な白馬さん。モンゴル人力士の心とお腹の故郷『ウランバートル』から、次に羽ばたくのは、どの力士になるのでしょうか?

 

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*今回訪れた相撲めしの店
『モンゴル料理 ウランバートル』

住所:東京都墨田区両国3-22-11 2F
電話:03-6411-4298
営業時間:17:00~23:00

 

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*本連載は月1回配信予定です。次回もお楽しみに!


 

 

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武田葉月(たけだ はづき)

ノンフィクションライター。山形県山形市出身。出版社勤務を経て、現職。おもに、相撲の世界を中心に、取材、執筆活動をおこなっている。近著に『大相撲 想い出の名力士たち』(双葉文庫)、『横綱』(講談社)など。文芸誌『小説推理』(双葉社)で「思ひ出名力士劇場」連載中。

ノンフィクション書籍 好評発売中!!

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大相撲 想い出の名力士たち
著・武田葉月

     

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