日本全国 相撲めしツアー!

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#05

『宮本の湯』

文・武田葉月

元幕内・剣武が当主を務める秩父の温泉宿

 大相撲名古屋場所は、横綱白鵬の通算勝ち星1047勝越え、そして39回目の優勝という話題で盛り上がりました。
 名古屋場所を終えた力士たちは、その1週間後から約1ヶ月に渡る夏巡業へと出発。
 岐阜、新潟・佐渡などを回ったあとの8月8日には、東京・渋谷にある青山学院大学の記念館で巡業が開催され、力士たちは学食で昼食を摂るなど、貴重な体験も味わったようです。
 その後、東北、北海道と続く巡業は、23日、24日に東京・お台場でおこなわれるなど、27日の千代田区のKITTE場所(JPタワー「KITTE」)まで続いていきます。


 さて、昨年から悩まされた足の故障から見事に復活し、名古屋場所を終えて、1050勝を挙げた白鵬と同じく、平成13年春場所に初土俵を踏んだのが、『宮本の湯』12代目当主、元幕内・剣武(つるぎだけ)の宮本一輝(かずてる)さんです。
 日体大相撲部で活躍し、22歳で入門した剣武さんに対して、モンゴルから来日した白鵬は15歳で入門。年齢差こそありますが、新弟子が相撲の基礎を学ぶ相撲教習所に一緒に通った、「花の同期生」なのです。
 けれども、出世のスピードは違いました。わずか3年弱で新十両(関取)に昇進した白鵬に対して、網膜剥離で幾度かの手術をした剣武さんは幕下で低迷。ようやく「一人前」と呼ばれる関取になったのは、31歳、平成22年九州場所のことでした。平成23年九州場所では、幕内に昇進。所要59場所(約10年)での新入幕は学生相撲出身力士としてはもっとも遅い出世と話題になりました。
 平成24年春場所後に現役を引退した剣武さんは、秩父・西谷津温泉にある実家『宮本の湯』で旅館修行をスタートさせます。現役当時から交友関係が広く、白鵬をはじめとする力士たちも休暇のたびに訪れるこの宿。元幕内力士の実績と経験を生かして、より相撲カラーを打ち出そうと、日々工夫を凝らしています。
「『白鵬関と同期生』なんていうと、おこがましい感じですが、これだけ優勝回数を重ねても、横綱はいつもフレンドリーに接してくれます。今は忙しくて、なかなか体を休める時間もないようですが、ぜひ、(白鵬が目標にしている)東京オリンピックまで現役を続けてもらいたいですね」
 と剣武さんはエールを送ります。

 西武秩父駅から車で約20分ほどの山間に立つ『宮本の湯』は、落ち着いた雰囲気の宿。

 

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12代目当主の宮本さん(右)と料理長の大久保裕一さん(左)


 館内に足を踏み入れると、樹齢800年の御神木が迎えてくれます。御神木に巻かれているのは、剣武さんと同じ武蔵川部屋に所属していた横綱・武蔵丸から寄贈された、本物の綱。

 

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樹齢800年の御神木に綱が巻かれている

 

 宿泊のお客様に提供される夕食、「里山懐石」は、旬の食材を生かして、毎月メニューが変わります。

 まずは、季節の前菜盛り合わせ。

 

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名物・味噌ポテト、蛸のマリネ いくらのせ、磯粒貝旨煮、アスパラ明太マヨ、出汁巻き玉子、鮭バジル焼、鴨ロース。

 

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活鯉の薄造り。

 

 先日訪れた、タレントのコニシキさんも、思わず「うまい!」と唸った、じゃが芋ヴィシソワーズは、秩父錦の純米吟醸と合わせて。地元の酒蔵八尾本店の「秩父錦」が、一番人気。

 

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「秩父錦」純米吟醸、きりっとごく辛。720ml、2000円~。

 

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「秩父錦」特別純米酒、大吟醸。300ml。840円~。

 

 そして、メインは所属していた武蔵川部屋(現・藤島部屋)のレシピを参考にしたちゃんこ鍋。白菜、しいたけ、ニラ、エノキなど、自家菜園で育てたたっぷりの野菜に、鶏ダンゴ、豚肉を入れた豆乳ちゃんこ鍋は、やさしい味わい。

 鮎、椎茸、蒟蒻は、囲炉裏焼きで楽しみます。

 

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ちゃんこ鍋と囲炉裏焼き。写真は、古民家旅館『宮本家』囲炉裏にて。

 

 締めの秩父きのことさくらえびの釜めしをいただくと、満腹感いっぱい! さらに、チョコレートムース、オレンジケーキのデザートが提供されます。

 

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秩父きのこと桜えびの釜飯。

 

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「里山懐石」が味わえる宿泊料金は1人1泊11300円~。


『宮本の湯』から徒歩2分の場所にひっそりとたたずむのが、幕末の面影を残した古民家旅館『宮本家』です。宿泊客は1日6組限定、隠れ家的な宿の奥には、農家の蔵を改造した『蔵BAR』が。

 

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『蔵BAR』では、きんもくせい、またたびなど、50種類の自家製果実酒、木の実酒を、30分1000円で利き酒できる。

 

『蔵BAR』の2階には、剣武さんが実際に使っていた化粧まわしや、相撲グッズがぎっしり! 勝った力士が受け取る懸賞金の袋なんて、なかなかお目にかかれませんよね。

 

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『蔵BAR』の2階には貴重な品々が展示されている。

 

 相撲カラー満載の『宮本の湯』と『宮本家』。今年5月、『宮本の湯』に新しいお風呂が完成しました。
 その名もズバリ「土俵露天風呂」。国技館の土俵をモチーフに、本格的な吊り屋根も作られた日本に一つしかない露天風呂は、早くも大人気になっています。

 

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日本に一つしかない「土俵露天風呂」。


 また、会議などに使われる多目的ホールには、横綱・武蔵丸の優勝掲額と化粧まわし姿の剣武さんの写真が飾られています。

 

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横綱・武蔵丸の優勝掲額と化粧まわし姿の剣武さんの写真。

 

「現役時代はたびたび病気やケガに襲われて、白鵬関や、大学の同級生で同期生の垣添(現・雷親方)に出世では大きく差を付けられていました。けれども、『いつかは俺だって……』という思いで相撲を続けてきて、幕内力士になることもできました。その間、いろいろな方と知り合い、お話をうかがったことが、今の旅館経営に役立っています」(剣武さん)
「近い将来、秩父で大相撲巡業を開催したい」という夢を持つ剣武さんは、「相撲愛」に満ち溢れています。

 


*今回訪れた相撲めしのお店

『宮本の湯』
電話:0494-75-2272

http://www.miyamotosou.co.jp/

 

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*本連載は月1回配信予定です。次回もお楽しみに!


 

 

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武田葉月(たけだ はづき)

ノンフィクションライター。山形県山形市出身。出版社勤務を経て、現職。おもに、相撲の世界を中心に、取材、執筆活動をおこなっている。近著に『大相撲 想い出の名力士たち』(双葉文庫)、『横綱』(講談社)など。文芸誌『小説推理』(双葉社)で「思ひ出名力士劇場」連載中。

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大相撲 想い出の名力士たち
著・武田葉月

     

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