日本全国 相撲めしツアー!

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#04

『ちゃんこ関取』

文・武田葉月

出羽海部屋の元力士、龍門さんのお店

 大相撲名古屋場所が盛り上がっています。
 四横綱に加えて、高安が新大関に昇進したことで注目度は抜群! さらに、アクロバット相撲の宇良、新鋭の御嶽海らの活躍もあって、会場の愛知県体育館には、早い時間からお客様が詰めかけています。
 横綱・稀勢の里、鶴竜の途中休場は残念ですが、千代の富士、魁皇の持つ最多勝記録更新を狙う白鵬は、元気いっぱい! 大横綱の貫録を見せて、土俵を盛り上げています。どっしりした横綱という存在があればこそ、土俵は引き締まるもの。しかし、「勝つ」ことが義務づけられている横綱という地位は、引退と背中合わせで戦わなければいけない厳しい立場にもあるのです。
 さて、昭和30年代後半から40年代前半にかけて活躍した、第50代横綱・佐田の山を覚えているでしょうか?
 長崎・五島列島出身、細身の体で40年春場所から43年春場所まで横綱を張り、現役引退後は出羽海親方として弟子の育成をする一方、日本相撲協会理事長としてさまざまな改革に着手。現在の相撲界の基盤を築いたという意味でも、貴重な才能を持った方でした。
 その佐田の山の出羽海部屋に、44年に入門し、長く十両で活躍した龍門さんが引退後、58年に開いたのが、山形市七日町にある「ちゃんこ関取」です。
 50年秋場所、新十両に昇進。51年名古屋場所から、出羽海部屋伝統の四股名「龍門」を名乗ります。187センチ、149キロの堂々たる体つきも相まって、師匠・出羽海親方の期待が大きかったことがうかがえます。
 ところが、十両筆頭まで進んだ龍門さんは、腰痛を悪化させ、57年夏場所限りで引退。本来、埼玉県出身の龍門さんが、なぜ山形の地でちゃんこ屋さんを営むことになったのか? ちょっと不思議な感じがします。
 じつは、腰痛を抱えていた龍門さんや、同じ出羽海一門の関取衆が密かに通っていたのが、山形市内にある鍼灸治療院でした。金の鍼を埋め込むという特殊な治療が力士の間で評判になり、遠路はるばる治療に通っていたわけです。そこで、引退後も信頼を寄せる鍼灸師の元で、治療を続けながらお店をオープンするという道を選んだのです。
 おかみさんの圭子さんと二人三脚で始めた「ちゃんこ関取」は、開業から30余年が経ち、日々、相撲好きなお客様が訪れています。

 

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繁華街の狭い路地を通ってお店の中へ

 

 山形といえば、河原で煮炊きをして楽しむ芋煮が有名。「ちゃんこ関取」での一番人気は、芋煮ちゃんこです。

 山形牛に里芋、コンニャク、ゴボウ、車麩、エリンギ、だんご(鰯と鶏肉のミックス)が入った芋煮ちゃんこは、素朴な味わいで、箸が進みます。他に、塩、しょうゆ、みそ、カレーのちゃんこもあり、オーダーは1人前からOKというのもうれしいところ。

 

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芋煮ちゃんこ2人前 3000円

 
 また、龍門さんが現役当時、全国各地を食べ歩いたメニューの中から、自分なりにアレンジした一品料理も好評。中でも納豆オムレツは「博多・中洲の居酒屋で食べた時、衝撃を受けた」(龍門さん)という人気の一品。

 山菜のおひたしや、わらびの一本漬けなど、山形ならではの季節のメニューも充実しています。

 お酒のお供には、山形牛と山形名物玉こんにゃくの煮込みもいただきたいところ。

 

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 シンプルなおいしさの納豆オムレツ、500円

 

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 わらびの一本漬け、山菜のおひたし、各300円

 

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山形牛と山形名物玉こんにゃくの煮込み、京都・祇園の辛味をかけて。500円

 

 酒処・山形の日本酒も紹介していきましょう。
 人気の銘酒、くどき上手(純米吟醸)、出羽桜(純米酒)、はくろすいしゅ(白露水珠=生原酒)のほか、楯野川(純米大吟醸)、初孫・美咲(純米吟醸)、おしゅん(発泡性清酒)といった地元ならではのお酒が、手頃な価格で楽しめます。

 

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左から、はくろすいしゅ、くどき上手、出羽桜、各1杯800円

 

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左から、おしゅん、初孫、楯野川、各1杯800円

 

 また、「ちゃんこ関取」では、相撲好きのお客様同士で「関取会」というグループを結成しています。自分で決めた四股名を木札に記し、お店に展示。さらに、関取会の中から、これまで横綱が26人誕生していて、横綱になると、綱打ち(横綱の綱を作ること)をし、土俵入りもおこなうというから、本格的です。

 

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ユニークな四股名の木札が並ぶ

 

 書道家のおかみさんの指導で、お気に入りの力士の四股名を半紙にしたためるお客さんもいるほどです。

 

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 一番人気はイケメン力士・遠藤

 

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若い頃、テッポウで汗を流す龍門さん

 

 ところで、平成14年、相撲協会を退職した出羽海親方(当時=境川親方)は、かつての弟子・龍門さんのお店にたびたび訪れていたそうです。
「親方はスキーが趣味で、毎年、冬になると蔵王山にスキーをしに来るんですよ。蔵王は温泉地でもありますから、スキーを楽しんだ後は、蔵王の旅館でゆっくりされたらいいと思うんですが、わざわざ山を下って、私の店に来てくださるんです。そうした心遣いが本当にありがたかったです」
「思い出話に時間が止まったようだった」と振り返る龍門さん。
「私の育った出羽海部屋は、かつての鷲羽山関などのように、小兵力士を育てた部屋でもあるんです。ですから、個人的には、石浦、宇良のような小兵や、ハツラツとしていて、ファイトを表に出す千代の国などの相撲っぷりが好きですね」
 龍門さんの相撲解説を聞きながら、山形の夜を楽しんでみてはいかが?

 


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「お一人でもお気軽にお越しください」(龍門さん)

 

*今回訪れた「相撲めし」のお店

『ちゃんこ関取』
住所:山形市七日町2-3-30
電話:023-631-7975

 

 

*本連載は月1回配信予定です。次回もお楽しみに!


 

 

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武田葉月(たけだ はづき)

ノンフィクションライター。山形県山形市出身。出版社勤務を経て、現職。おもに、相撲の世界を中心に、取材、執筆活動をおこなっている。近著に『大相撲 想い出の名力士たち』(双葉文庫)、『横綱』(講談社)など。文芸誌『小説推理』(双葉社)で「思ひ出名力士劇場」連載中。

ノンフィクション書籍 好評発売中!!

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大相撲 想い出の名力士たち
著・武田葉月

     

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