台湾の人情食堂

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#02

台北駅前ドミトリ―と美味しい散歩道

文・光瀬憲子

なにかと便利な台北駅前に泊まる

 北は馬祖列島から南は墾丁まで、台湾各地を食べ歩くようになって、あらためて台北駅の大切さに気づいた。台北駅は日本で言えば東京駅のように、地下鉄、在来線(台鐵)、高速鉄道(高鐵)などの路線に加えて長距離バスのターミナルもある交通の要衝だ。にぎやかでオシャレなエリアは台北東部に移ったけれど、やっぱり台北駅の重要性は変わらない。

 そんな台北駅とほぼ直結した便利な場所に「NiHao@台北」というドミトリーがある。ここ数年、台北のドミの発展が目覚ましい。中国本土からの旅行客が増大し、ホテルの供給が間に合わず、宿泊費も高騰したため、台北市内にルームシェア型のドミが急増したのだ。

 そのなかでも大きな雑居ビルの中にあるNiHao@台北は、台北駅のM3出口からわずか50メートルというすばらしい立地。雨に濡れずに軒下を通って台北駅まで辿り着けるし、台北駅から台湾全土どこへでも向かうことができる。市内をめぐるならMRTにひょいと飛び乗ればいい。郊外へ足をのばすなら在来線でのんびり出かける。滞在期間が短ければ高速鉄道でサッと地方都市まで移動。旅費を惜しむなら長距離バスで一気に目的地まで。どう動くにしても最高の立地なのだ。

 なれてしまえばドミ滞在は快適だ。共有スペースのラウンジ(写真)ではコーヒーが無料で飲めるし、積極的に話しかければ外国人の友達もできる。1泊2000円台で泊まれるので旅費の節約にもなる。

 

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 ドミは一部屋にベッドが5~6台といったところ。大きなスーツケースはベッドに固定できるよう施錠用の鍵を持っていくといい。室内で使うスリッパやタオル、歯ブラシなどの備品は持参する。音が気になる人は耳栓を用意する。その程度の工夫で、ドミ暮らしはぐっと楽しくなる。

地元の人たちに人気の水餃子と麺

 このNiHao@台北から駅とは反対方向へ数メートル歩いて路地を左折すると、右手に人気の餃子店「豪季水餃專賣店(ハオジースエジャオジュアンマイデェン)」がある。台北駅のすぐ近くなのに観光客の目に留まらないのは、何の変哲もない路地裏の食堂に見えるからだろうか。だが、この界隈の会社員には定評のある店だ。店は台湾の飲食店としてはかなりきれいなほう。

 昼時はほぼ満席なので相席も覚悟しよう。この店の目玉はもちろん水餃子。台湾では餃子といえば水餃子が一般的。日本のような焼き餃子は「鍋貼」という名前が付いていて、水餃子店では扱っていないのが普通だ。

 『豪季』の水餃子は10個で70元(約260円)。10個も食べればタンパク質と炭水化物を十分に摂れる。白い皿に並んだ水餃子は皮が厚く、つまみ上げようとするとツルンと箸から逃げる。なんとかつかまえて口に運ぶと、皮はほのかに甘みがあり、中からジュワッと肉汁たっぷりの新鮮な豚肉が顔を出す。至福のランチ、正統派の水餃子だ。

 

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 さらに、水餃子専売店と謳いながらも見逃せないのが乾麺。なかでも汁なしの太麺にそぼろ肉のソースとキュウリの千切りが載った炸醬麵(ザージャンミェン)は絶品。コシのある麺は四国のさぬきうどんを思わせる。ツルンとしているが、少し縮れているので甘辛いひき肉ソースがよく絡む。たっぷりと添えられたキュウリはまた爽やかで、歯ごたえもいい。

 

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大好物のワンプレートランチ

 台北駅に近いドミを旅の拠点にしたら、駅界隈をぶらぶら歩いてみよう。駅の南側、新光三越ビルの裏手はごちゃごちゃしていているが、安くて旨い食堂の宝庫だ。台北駅周辺はオフィスと予備校が多いので、サラリーマンと学生両方の胃袋を満たしつつ、それぞれのお財布に対応できる店が揃っている。

 たとえば、新光三越ビルの裏手にのびる懷寧街には、私の大好きな燒臘(サオラー)の名店『好味(ハオウェイ)』がある。燒臘とは豚肉、鴨肉、鶏肉などをローストしたもので、広東地方や香港が本場だが、台湾でもランチメニューとして人気がある。店のウィンドウに赤っぽい鴨肉や豚肉がぶら下がっていたらそれが燒臘の店だ。

 

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 浅い皿に白米を盛り、この上に燒臘の肉のスライスをドサッと載せて、さらに青野菜の炒め物などを添える。これでワンプレートランチのできあがり。燒臘スライスは1種類だけでなく、3種類を盛ってもらうこともできる。これは「三宝」と呼ばれることが多い。私は脂ののった鴨肉が大好きなので鴨だけでも満足だが、ビギナーはやはり叉焼(チャーシュー)、鴨肉、鶏肉のローストあたりを選んでみると楽しいだろう(写真)。

 

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 『好味』の価格帯はどちらかというとサラリーマン向け。ワンプレートランチの値段は80元~90元程度。また、この店の燒臘は他店と違ってちょっと大人な味付けだ。たとえば蜜漬けの豚肉は黒々としていて、単に甘いだけでなく、奥深い味がする。口に含むと、深煎りコーヒーのようなコクがある。脂ののった鴨肉やツヤツヤした鶏肉もみごと。そして、白米を囲むようにして春雨炒め、キャベツ炒め、ホウレンソウ炒めなどが添えてあり、台湾料理にしては野菜もたっぷり摂れる。これは外食が多い勤め人にはうれしいサービス。スープはセルフで無料。味はしっかりしているし、店内も清潔なので台北ビギナーでも安心して利用できる。

豚足アイス(!)との遭遇

 もうひとつ、ちょっと変わったデザートがある。台北駅から西門町方面に10分歩くと、創業68年という老舗のアイスクリーム店『雪王』(シュエワン)がある。

 

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 店構えは大衆食堂風でアイスクリーム店らしくないのだが、その品揃えが奇抜なことで有名。一番人気のタロイモアイスクリームやスイカアイスクリーム。このへんは王道と言える。さらにライチや釈迦頭といった台湾独得のフルーツもアイスクリームになっている。このあたりはまだ序の口。お茶シリーズは烏龍茶、ジャスミンティーなど。野菜シリーズはトマトやトウモロコシ。そして、一番の珍味は豚足(写真右)や肉そぼろ(写真左)。こうなると何かの罰ゲームとしか思えない。でも珍味以外のアイスクリームはかなりレベルが高い手作りの味なので試してみる価値はある。

 台北駅周辺は地元の人たちのランチシーンをつぶさに見ることのできるエリアだ。意外と観光客が少ないので、みなさんもぜひ自分だけの名店を見つけてほしい。

 

*本連載は月2回(第1週&第3週金曜日)配信予定です。なお、1月第1週は冬休みのためにお休みさせていただきます。次回は1月第3週金曜日配信予定です。お楽しみに!

 

 

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著者:光瀬憲子

1972年、神奈川県横浜市生まれ。英中日翻訳家、通訳者、台湾取材コーディネーター。米国ウェスタン・ワシントン大学卒業後、台北の英字新聞社チャイナニュース勤務。台湾人と結婚し、台北で7年、上海で2年暮らす。2004年に離婚、帰国。2007年に台湾を再訪し、以後、通訳や取材コーディネートの仕事で、台湾と日本を往復している。著書に『台湾一周 ! 安旨食堂の旅』『台湾縦断!人情食堂と美景の旅』『ビジネス指さし会話帳 台湾華語』『スピリチュアル紀行 台湾』他。auポータルサイトの朝日新聞ニュースEXでコラム「翻訳女」連載中。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/

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