石巻/牡鹿半島 絶景・美食・縄文

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#01

「宮城オルレ 奥松島コース」を歩いてみた

 

「宮城オルレ」


文と写真/編集部

 

 

「宮城オルレのオープニングセレモニーがあるんですけど、参加しませんか?」

「オルレ? オルレって何ですか?」

 

 地方食品のブランディングを手掛けているA氏から虎ノ門ヒルズ2階にあるカフェでお誘いを受けた。この日は、ここで地方食品通販の見本市が開催されていたので、何か美味しい食品のことかと話に食いついた。しかし、食べ物の話ではなかった。トレッキングの話だったのだ。

「オルレ」とは韓国・済州島を発祥とする徒歩旅行の道のこと。済州の方言で「通りから家に通じる狭い路地」という意味だ。海岸線や山などの自然、民家の路地などを身近に感じながら、自分のペースでゆっくり楽しんで歩くトレッキングコースで、現在、済州島には10~20キロの24コースがあり、2010年度に済州島を訪れた観光客約700万人のうち約200万人がオルレを歩いたという。

 

 A氏はたたみかける。

「今度、宮城県に日本で2番目のオルレコースができるんです。タビリスタの取材も兼ねて一緒に歩きましょうよ。トレッキングといっても散歩みたいにのんびり歩く感じですから、体力に自信がなくても大丈夫だと思いますよ」

 

  済州島で始まった「オルレ」は、「モンゴルオルレ」、「九州オルレ」へとその姉妹道が広がり、「宮城オルレ」はそれに続くものだ。興味はあるが、日頃の不摂生のせいで、山歩きには尻込みする。なにせエレベータ―が点検中だっただけでものすごいショックを受けるくらいだ。大丈夫だろうか。

 

「途中で炊き出しみたいなものも提供されるみたいですよ。東北はお酒も美味しいですし…云々」

 

 2018年10月初旬、私は宮城県東松島市にある宮野森小学校のグランドに立っていた。東北の地酒という魅力が体力の不安に勝ってしまったのだ。

 

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復興のシンボルともいえる斬新なデザインの校舎が秋晴れの森に調和している。この宮野森小学校の校庭がオープニングセレモニー会場となった。

 

 宮野森小学校の最寄駅である野蒜は仙台からJRの「仙石東北ライン」快速で約38分。震災後に高台に移転し新設された真新しい駅だ。前に東松島を訪れた時、仙石線は高城町で折り返し運転をしていた。2011年3月の震災で被災したJR仙石線は、2015年の5月に長い間不通だった高城町~陸前小野間の工事が完成して全線復旧を果たす。なかでも陸前大塚~陸前小野の区間は、東松島市の復興計画に従って内陸側の高台に建設中の「野蒜北部丘陵地区」へ移設して新線が建設され、同じ区間にあった東名、野蒜の両駅も同時に新線へ移転したのだ。旧線からの直線距離にして約500mほど内陸に移された形だ。
 そして「仙石東北ライン」というのは、仙石線が全線復旧したのと同時に開業した新しい運転系統で、仙石線と東北本線を直通する。松島駅付近で近接していた仙石線と東北本線との間に約300mの「接続線」が建設され、仙台~石巻間を東北本線経由で特別快速、快速列車の運転が始まり、県庁所在地の仙台と宮城県第2の都市である石巻へのアクセスが飛躍的に向上した。鉄道ファンならば、ご存じかもしれないが、新造のディーゼルハイブリッド車両が全列車に投入されていて乗り心地も快適だ。
 「宮城オルレ奥松島コース」のオープニングセレモニーが行なわれた宮野森小学校は、この「野蒜北部丘陵地区」にある。校舎は、C・W・ニコル・アファンが監修を手がけ、「復興の森作りとニコルの森の学校プロジェクト」の集大成とも言える大型木造建築物だ。このプロジェクトでは東日本大震災により破滅的な被害にあった野蒜小学校と旧宮戸小学校との合併によって新しくなった小学校を中心に、子供たちへ託す未来が希望の地となるよう高台全体の再建を行なっている。この地区に新設された東名、野蒜の両駅を中心に道路や住宅が整備され、新たな街づくりが着実に進んでいる印象を受けた。

 

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陸前小野駅で仙石線の初代「マンガッタンライナー」と遭遇。2003年(平成15年)JRと石巻市が協力して実現した。毎週日曜日に運航されている。

 

 

 

 

「奥松島コースオープニングセレモニー」

 

 

 「宮城オルレ」は、気仙沼市に「唐桑コース」、東松島市に「奥松島コース」という二つのオルレコースが設けられているのだが、今回参加したのは「奥松島コース」のオープニングセレモニーだ。快晴の下での盛大な式典だった。来賓には宮城県の村井知事や東松島市の渥美市長ら錚々たるメンバーが集まり、韓国から済州オルレの提唱者で社団法人済州オルレ理事長の徐明淑(ソ・ミョンスク)さんも来日して「宮城オルレ」の門出を祝った。それにしても……。たしかに立派なセレモニーだが、なぜか若い女子が目立つ。オルレは女子たちにそんなに人気だったのか? と半信半疑に思っていたのだが、その謎はすぐに解けた。

「本日はシークレットスペシャル応援団として、「Hey! Say! JUMP」の八乙女光さん、知念侑李さん、有岡大貴さんに来ていただいております!」

 司会者の声が響くと、歓声が上がる。そう、ジャニーズの人気者が特別ゲストとして参加していたのだ。宮城県出身の八乙女くんをはじめ、メンバー3人からも宮城オルレへの応援メッセージが贈られ、会場の盛り上がりは最高潮に達した。かなりシークレットな扱いだったので、駆けつけることができたファンの数は少なかったようだが、何も知らずに参加した人たちも歓喜し、イベントは大盛況だった。

 

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オープニングセレモニーでカットしたのは日本を象徴する朱色と海に似ている青色のリボン。オルレコースにも結び付けられている。

 

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JR野蒜駅南口のロータリーから無料シャトルバスに乗り込み、スタート地点の「セルコホームあおみな」に向かう。

 

 スタート地点の「セルコホームあおみな」は、奥松島の観光拠点。地域の特産品を扱う売店や足湯が設置され、奥松島遊覧船の案内所もある。さっそく出店で名物の焼き牡蠣をいただく。これから10キロも歩くのだから栄養補給は必須だろう。恐ろしくビールが欲しくなるが、トレッキングの前なのでぐっとこらえる。
「セルコホームあおみな」を出発するとすぐに急な山道に入った。はやくも自堕落な生活を猛省することになるが、とにかくひたすら登る。道が緩やかになり、ようやく辺りを見渡す余裕が出てきた。コースの途中には朱と青のリボンが見失わない間隔で木の枝や電柱などに結んである。方向が変わるときなどには、木製の矢印や石などにペイントされた矢印があり、青色はスタート地点からフィニッシュ地点に向かう正方向を、朱色は逆方向を表している。ところどころにカンセと呼ばれる道しるべが設置されていて、スタート地点からこのカンセの頭の方向に進む。縄文からの歴史と海と大地の恵みに育まれた大自然を感じながら、数多くの景勝地が存在する奥松島・宮戸島を一巡りするコースだ。この地方の縄文文化に関する歴史ついては、“危険地帯ジャーナリスト”として知られ、「TABILISTA」で『日常にある「非日常系」考古旅』を連載していただいている丸山ゴンザレスさんにリポートしてもらう予定で、すでに現地取材に入ってもらっているので楽しみにしていてほしい。

 

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スタートしてすぐに急な登り坂が続く。道々に朱青のリボンが結びつけられていて、コースを確認することができる。 

 

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カンセと呼ばれる道しるべは、済州の方言で「野生の仔馬」のことで怠け者を表しているという。頭の方向に進んで行く。

 

 

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この「奥松島コース」前半は、「大高森薬師堂」、「奥松島縄文村歴史資料館」、「さとはま縄文の里史跡公園」などの見どころを散策しながら歩く。

 

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このあたりは「陸の奥松島」と呼ばれ、各所に昔は海だった名残りが岩肌などに見られる。黙々と歩き、月浜海岸を目指す。

 

 お昼の休憩所となった月浜海岸では、東松島市名物「のりうどん」、南島原市(九州オルレ)の「島原素麺(そうめん)」、航空自衛隊松島基地の新メニュー「空上げ(唐揚げ)」が無料で振る舞われていた。

 「のりうどん」は、香りの強い名産の海苔を粉末状にし、うどんに練り込んだもの。ツユにものり粉が混ざり、最後の一滴までのりを楽しめる。コシがあって、食べ応えもある。程よい塩分が疲れた体に沁みて旨い。見た目は蕎麦っぽいが、蕎麦ではなく饂飩なので、そばアレルギーの方でも安心。一方、九州オルレから提供された「島原手延べそうめん」は、さっぱりとしていて食べやすく、ツルツルいただけるので、運動の後でも箸が進む。航空自衛隊で唯一の展示飛行を行っているブルーインパルスが所属する松島基地のメニュー「空上げ(からあげ)」は、揚げたてのアツアツ。ボリューミーなサイズで栄養も満点だ。。ちなみに航空自衛隊の各基地の給食で提供される鶏の唐揚げを、航空自衛隊全体でより上を目指すとする意味を込めて「空上げ(からあげ)」と呼称しているそうで、全国の各基地で特色ある空上げがあるのだとか。

 そして、ここにオープニングセレモニーに出席していた「Hey! Say! JUMP」の3人が登場し、再びサプライズ。想定外の特別サービスに参加者は大喜び、感極まって泣き出す女の子もいた。美味しい食事と美しい景色、サプライズゲスト。休憩所は一気に華やぎ、お祭りのような賑わいをみせた。

 

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休憩所では姉妹道の「九州オルレ」から島原手延べそうめんも振る舞われ、出店周辺は大勢の人で賑わった。

 

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月浜海岸。奥松島の碧い海と小島の緑のコントラストが美しい砂浜で一息。この景色が徒歩旅の疲れを癒してくれる。

 

 月浜海岸でのお昼休憩を終えると、しばらくは美しい海岸線や長閑な畦道といった平坦な道が続く。これなら体力に自信がなくても行けそうだ。のんびりムードで歩いていたが、オルレはそんなに甘くはなかった。観音寺の墓地にさしかかったあたりから急な坂が始まり、ふたたび山道トレッキングへと突入していく。健脚な人であれば、なんてことはないのかもしれないが、後半戦に入ってからの登山はこたえる。この道はリアス式海岸沿いの集落と集落を結ぶ生活道としての役割を担ってきたというが、なかなかどうして生活道としては少々険しい。海岸線が入り組んでいるから、山を越えた方が近道なのだろうが、かなりの勾配がある。残念ながら健脚ではない人間なので、必然的に言葉を発することもなくなった。

 

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観音寺から続くこの林道は、「人が歩くと活きる道」と伝えられ、昔は通学路としても使われていたそうだ。昔の子ども達に敬服する。

 

 狭くて急な坂道を無言で登り続けること30分、木々の間から眺望が開けた。眼下には美しいリアス式海岸、碧い海に多くの小島が浮かび、遠くには牡鹿半島の山並みも望むことができる。絶景だ。これまでの苦行に近い道のりもこの景色を見るための修行だったのだ。宮戸島の中心部にそびえる大高森は、松島四大観のひとつで「壮観」と呼ばれている。疲れを忘れて夢中でシャッターを切るが、生憎この絶景を皆さまにお伝えする腕を持ち合わせていなかった。申し訳ない。

 

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松島四大観のひとつ 大高森の展望台からの眺望。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 反対側からは石巻、牡鹿半島まで見渡すことができる。

 

 大高森の展望台から360度の絶景を堪能し、山を一気に下りると、そこはスタート&ゴール地点の「セルコホームあおみな」だ。ここから再びバスに乗り込み、奥松島の玄関口、野蒜駅に戻るとすでに日は西に傾いていた。

 

「宮城オルレ 奥松島コース」は壮大な風景と由緒正しい温泉、長い間築いてきた文化と歴史を感じ、体験できる特別なトレッキングだった。不安だった体力もどうやら大丈夫だ。同行したA氏も昂揚した様子で日頃あまり見たことのない笑顔を見せている(じつはハッスルしすぎて膝を痛めていたことを後日告白した)。都会では味わうことのできない幸福な時間だ。オルレが韓国で多くの人に支持されている理由が少し分かった気がした。奥松島は仙台と石巻の間に位置していて、どちらからもアクセスしやすい。今回はオープニングイベントに参加したので大勢の人たちと歩いたが、空気も良く、人も親切、健康にも良い、このオルレは少人数でもう一度試してみたいと思った。後日、「TABILISTA」で『韓国の旅と酒場とグルメ横丁』を連載していただいている紀行作家のチョン・ウンスクさんにもこのオルレのことを話す機会があったのだが、大変興味を持っていただいたので、ぜひお誘いしてみたいと思う。そして、もうひとつの「宮城オルレ気仙沼・唐桑コース」にも挑戦してみたい。

 奥松島から石巻へは約30分ほどだ。じっくり地酒を味わうことにしよう。石巻、牡鹿半島の物語はまだまだ続く。次回もお楽しみに。

 

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宮城オルレ奥松島コースオープニング

動画制作:エリアポータル㈱

 

この連載は毎月2回(第2、第4水曜日)に更新予定です。お楽しみに!

 

【NEWS】

 

東京シティ・エアターミナルで 
「宮城の観光展」を開催!!

11/30(金)まで 【入場無料】

 

東京は箱崎にある東京シティエアターミナルの2階にある観光情報発信スペース「毎日が旅行博」では、会場では月替わりで日本全国各地の観光情報を映像・パンフレット等で発信するとともに、独創的なイベント等を実施して各観光地の魅力をお伝えしています。11月の特集は宮城県です。これからの東北観光を担う新スポットを動画、パネル、物産イベントでご紹介しています。

【物販イベント】
週末には宮城県の特産品を販売するイベントも行なわれます。

11/23(金)、11/24(土)、11/25(日)
11:00~17:00まで開催。 

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T-CATポスター

1.宮城県観光プロモーション

 

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東京シティエアターミナル2階「毎日が旅行博」Tour Expo 内 [東京都中央区日本橋箱崎町42-1]

 

主催 サンファンヴィレッジ

協力 東京シティ・エアターミナル東京空港交通宮城県経済商工観光部観光課宮城県観光連盟みらいサポート石巻宮城県石巻市大崎市石巻観光連盟峩々温泉東鳴子温泉旅館大沼良葉東部JF宮城県石巻湾支所万石浦鮮かき工場カイタクビヨンド牡鹿の学校

 

 

牡蠣のまち 石巻へ!!

 

 石巻は牡蠣の産地として有名ですが、2018年4月下旬に同じ宮城県の南三陸町戸倉地区に続き、石巻地区、石巻市東部、石巻湾の3支所が国内2例目となるASC*国際認証を取得しました。ASC国際認証というのは、WWFが国際的な海洋保全活動の一環として、天然の水産物ではなく、養殖による水産物を、海の自然や資源を守って獲られた持続可能な水産物(シーフード)として認証する仕組みです。

*「ASC(Aquaculture Stewardship Council:水産養殖管理協議会)」

イシノマキマンTwitter 【https://twitter.com/ishinomakiman

*詳しくは石巻観光協会のホームページでご覧いただけます。

 

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