旅とメイハネと音楽と

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「出張メイハネ」で中東料理パーティー!

文と写真・サラーム海上

 

50人分×7種類の中東料理を2日連続で作る

 新刊『MEYHANE TABLE 家メイハネで中東料理パーティー』(LD&K)の発売を記念して、去る5月11日、12日に渋谷の『Cafe BOHEMIA』にて、僕が中東料理をたっぷり作って、お客さんをもてなすイベント「出張メイハネ」を開催した。
 これまでも「出張メイハネ」は規模は様々な場所で行ってきたが、50人分×7種類の料理を2日連続で作る(要は700皿分!)のは今回が初めてだ。
 2日に分けた理由は、50名定員だと予約が早々に埋まってしまっていたこと、そして、出版記念スペシャルにふさわしく、2日間を別々のテーマで行いたかったためだ。初日は会場となる『Cafe BOHEMIA』の野外テラスを活かして、炭火を熾してシシケバブを焼くことにした。渋谷のど真ん中で炭火焼きのシシケバブ・パーティーなんてこれまで誰もやっていないはず。
 そして、2日目も前からやってみたかったベジタリアン・フルコースにした。中東料理はベジタリアンに対応しやすいと、以前から繰り返し訴えてきたが、メインディッシュまでベジタリアン対応に作るのは僕にとっても初めての試みだ。
 何度作ってはいても、一度に50人分となると、材料の計算だけでも頭が痛くなる。その上、あの材料は本当に足りるだろうか。作っている途中であれを焦がしてしまったりしないだろうか? そんなことばかり考えてしまい、いまだに前日は緊張してよく眠れなくなる。しかし、実際に作るのは僕だけではない。僕がお店に入る時間までには、お店の厨房スタッフが僕の書いたレシピを元に、かなりの下準備を済ませておいてくれる。それでも今回は初めての試みが続き、珍しく僕は胃が痛くなった。

 

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今回の出張メイハネは渋谷のカフェ・レストラン『Cafe BOHEMIA』で開催

 

 

初日は炭火焼きシシケバブ・パーティー!

 初日の難関はなんといっても炭火焼きシシケバブ。見るからに美味そうなラム肉をトルコ産のタイムの原種であるケキッキとヨーグルト、にんにく、オリーブオイル、玉ねぎと青唐辛子とトマトのすりおろし、塩、胡椒で数時間マリネし、金串に刺していく。しかも、今回のケキッキはイスタンブルの友人から譲りうけたもので、通常のタイムのように葉を乾燥させたものではなく、その花の蕾を乾燥させた極上品だ。トルコ南部地中海の村アナムルからの直送である。普通のケキッキやタイムでは出せない複雑な味が期待できる!
 鳥のもも肉も玉ねぎとにんにくのすりおろし、塩、オリーブオイルでマリネし、こちらも金串に刺す。レンタルショップで借りてきた2台の家庭用BBQピットの上で焼く。焼き網の上に串刺しにしたシシケバブを並べてみると、一度に焼ける数は2台で最大40本。50人のお客さんにラムと鶏を一本ずつで合計100本、それだけのシシケバブを焼くにはピットを2.5回転させなければならない。さらにお客さんが一度にドーっと押し寄せて来たら対応できなくなるので、屋台の焼き鳥と同様、前もってある程度火を通しておくほうがいい。いつもなら、僕と厨房スタッフだけで対応するのだが、この日はシシケバブを焼く専任のスタッフを手配してもらった。

 

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2台のBBQピットでシシケバブ100本を準備

 

 また、この日は『MEYHANE TABLE 家メイハネで中東料理パーティー』や『イスタンブルで朝食を』に繰り返し登場する中東のハーブ、スマックとザータル・ミックスを使った料理を中心にした。まず、白いんげん豆と玉ねぎのサラダ「ピヤズ」。日本の「ゆかり」によく似た酸っぱいハーブ、スマックとレモン汁、塩、オリーブオイルで味付ける。
 そして、ピタパンのグリーンサラダ「ファトゥーシュ」。オーブンで焼いてカリカリにした(現地では前日の残り物を使う場合も)ピタパンをパリパリと砕いて、レタスやラディッシュやトマト、黄パプリカのサラダに和える。味付けはザータル・ミックスを中心にしたビネグレットソースだ。ザータル・ミックスはタイムの亜種であるザータルと煎りゴマ、スマック、塩を混ぜたレバノンやイスラエルの万能ハーブ調味料だ。
 3つ目は普通のフライドポテトに、ザータル・ミックスとおろしにんにく、みじん切りのパセリ、オリーブオイルを混ぜたソースを和えた「バタータ・ハラ」。こちらは中東のジャンクフードと言おうか、簡単なのに評判が良い。ザータル・ミックスのエキゾチックな香りが、いつものフライドポテトを一瞬で中東料理に変える。

 

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白いんげん豆と玉ねぎのサラダ「ピヤズ」。スマックとレモンの爽やかな酸味が美味しい

 

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ピタパンのグリーンサラダ「ファトゥーシュ」

 

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フライドポテトの中東料理版「バタータ・ハラ」

 

 これら3つのメゼの他、出張メイハネに欠かせないひよこ豆と練りゴマのペースト「ホモス」も用意した。これまで出張メイハネではホモスを作らなかったことが一度だけあるが、その時に限ってお客さんから「何か物足りない!」と揃って言われたのだ。ホモスは豆と練りゴマがベースなのですぐにお腹にたまる。以来、ホモスだけは必ず作るようにしている。

 

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ひよこ豆と練りゴマのペースト「ホモス」。お腹にたまるので、食べすぎに用心!

 

 この日は特別にメインディッシュを2品用意した。一つ目は鶏肉とモロヘイヤの煮込み。僕が2013年にレバノン南部カファルキラ村の家庭でいただいたものをそのままコピーしたものだ。鶏の胸肉とガラを煮込み、スープが出たら、鶏を取り出し、コリアンダーパウダーで味付け、ざくぎりのモロヘイヤの葉を大量に加え、ほぐした鶏胸肉を戻した深緑色のシチュー。バターライスにたっぷりかけていただく。

 

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「鶏肉とモロヘイヤの煮込み」はやさしい味。ついお代わりしたくなるが、まだもう1品メインがある

 

 ここまでの5品で早くもお腹一杯というお客さんが出てきた。僕はイベント開始時から「ホモスやパンを食べ過ぎないように!」と口を酸っぱくするほど伝えておいたのだが、皆さん自己管理ができてないなあ(笑)。しかし、テラスから流れてくる炭火焼きシシケバブの香りに抵抗できる人はいないだろう。
 お昼すぎから立ちっぱなしで料理を作り、開店してからは司会やホストとしてお客さんの席を周り続けてきた僕も、炭火に焦げる肉の香りに抗えるわけもなく、並んでいる皆さんの列に無理やり横入りをしてラムのシシケバブをゲット! う~ん、周りはカリカリ、中はまだうっすらピンク色、二度焼きしているとはいえ悪くない。ケキッキの蕾とヨーグルト、にんにくや玉ねぎの味も、火を安定させた炭火で焼かれて、しっかり肉の中に閉じ込められている。これは美味い! 炭火焼きシシケバブ、『Cafe BOHEMIA』のこの夏の特別メニューにしてほしいくらいだ!

 

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もう1品のメインディッシュ、ラムと鶏の炭火焼シシケバブ!

 

 ラムと鶏、2本のシシケバブまで食べると、よほどの大食漢の人を除いて、お腹一杯になったことだろう。そこでデザートにはバニラアイスとイチゴとざくろビネガーのサラダを用意した。これはバニラアイスの上にイチゴとスペアミントを散らし、ざくろビネガーを回しかけるだけ。ざくろビネガーはトルコではサラダのドレッシングとして用いられるが、バニラやチョコアイスクリームとの相性も抜群だ、その上、アイスとフルーツだけなので、ホモスやパンでお腹を膨らませすぎた方にも楽しんでいただけたようだ。

 

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バニラアイスとイチゴとざくろビネガーのサラダ。見た目も華やかでパーティーにぴったり

 

 さて、こうして出張メイハネ初日の炭火焼きシシケバブ編は無事終了した。夜11時に撤収し、そのまま自宅に戻り、倒れるように眠りにつき、翌日のお昼すぎに再び『Cafe BOHEMIA』へ。

 

 

2日目は中東料理のベジタリアン・フルコース

 2日目はベジタリアン・フルコース。肉がない分、お腹にたまるものを用意する必要がある。ホモスは当然ながら、もどしたクスクスをトマトペーストとレモン汁、オリーブオイルで味付け、トマトや万能ねぎのみじん切りを散らしたクスクスのサラダ「クスール」を用意した。

 さらに、白チーズと刻みパセリを春巻きの皮で葉巻状に包み、油で揚げた中東版のチーズ春巻きこと「シガラ・ボレイ」も揚げ物なのでお腹にたまるだろう。

 レンズ豆とトマトとバジルのスープに小麦粉でとろみを付け、最後にバーミセリを入れたモロッコのスープ「ハリラ」も腹持ちが良い。

 

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ベジタリアン・コースの前菜、クスクスのサラダ「クスール」

 

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中東版のチーズ春巻き「シガラ・ボレイ」

 

 そして、メインディッシュには、ナッツや干しぶどうとともに炊き込んだご飯をパプリカに詰めてオーブンで焼き、アーモンドパウダーをたっぷり散らした「ベジタリアン・ドルマ」。この料理は、本来はピーマンに牛ひき肉とご飯を詰めて炊き込んだトルコ料理「ビベール・ドルマス」を、ベジタリアン仕様にしたものだ(レシピと写真は本文最後に紹介)。トルコでも近年はベジタリアンやヴィーガンに対応したお店が急速に増え始めている。
 この日のデザートには、昨年の夏に渋谷を中心にブレイクした西瓜とミントと白チーズのサラダが今年最初の登場。まだまだ旬とは言えないが、いよいよ西瓜の季節である! レシピは『MEYHANE TABLE 家メイハネで中東料理パーティー』にも掲載しているが、この夏、この料理は人気が出すぎて、日本全国に白チーズが品薄になりそうな予感がしている。

 

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今夏さらにブームになりそうな「西瓜とミントと白チーズのサラダ」

 

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ベジタリアン・フルコースではCHANDONも振舞われた

 

 さて、こうしてなんとか無事に2日間、100人分の中東料理を作り、出張メイハネを成功させることが出来た。まだまだこの後も、この夏いっぱいは僕が教える中東料理教室や、個人宅にうかがって料理を作るプライベート出張メイハネ、中東料理レクチャーなどが続く。

 しかし、その前に、たった10日間だがトルコの音楽祭の取材に出かけてきた。次回はその音楽祭『Cappadox 2016』の様子をお届けしよう。
 

 

ベジタリアン・ドルマを作ろう!

■ベジタリアン・ドルマ(パプリカのご飯づめ)

【材料:3人分】
赤、緑、黄色のパプリカ:各1個ずつ
オリーブオイル:大さじ1
塩:少々
胡椒:少々

〈詰め物〉
 長粒米:150g
 オリーブオイル:大さじ1
 玉ねぎ:1/4個(みじん切り)
 にんにく:1片(みじん切り)
 アーモンド:30g(粗みじん切り)
 トマト:1/2個(皮をむき、粗みじん切り)
 塩:小さじ1/2
 胡椒:少々
 干しぶどう:大さじ2

お湯:適宜
アーモンドパウダー:大さじ2
オリーブオイル:大さじ1
スペアミントのみじん切り:大さじ1
パセリのみじん切り:大さじ1

【作り方】
1.オーブンを200度に温めておく。パプリカは縦2つに割り、種を取り除き(へたは残す)、オリーブオイルを刷毛で塗り、塩と胡椒をふって、天パンに内側を上向きにのせて、15分焼く。
2.長粒米は水洗いして、ざるにあげ、20分以上おく。
3.大鍋にたっぷりの湯(分量外)を沸かし、沸騰したら2の長粒米を入れ、時々かき混ぜながら7分茹で、アルデンテになったら、ざるにあげる。
4.鍋にオリーブオイルを入れ、中火にかけ、玉ねぎのみじん切りを加え、透明になるまで炒める。にんにくのみじん切りとアーモンドを足し、にんにくの香りが立ってきたら3の長粒米と干しぶどう、トマトのざく切りを加え、必要なら水を足し、5分炊き、火をとめて塩、胡椒で調味する。
5.天パンの上のパプリカに、4の詰め物を均等に詰める。
6.天パンのパプリカの周りに1cmほどの高さまでお湯(分量外)を注ぎ、190度のオーブンで10分焼く。
7.パプリカの上にアーモンドパウダーとオリーブオイルをふりかけ、5分焼く。
8.スペアミントとパセリのみじん切りを散らして、できあがり。

 

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「ビベール・ドルマス」をベジタリアン仕様にした「ベジタリアン・ドルマ」

 

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『MEYHANE TABLE 家メイハネで中東料理パーティー』&『イスタンブルで朝食を』ともに好評発売中です!

 

 

*来る6月19日(日)14時~、東京・表参道の『青山ブックセンター本店』で、新刊刊行記念イベント「MEYHANE TABLEができるまで~クラウドファンディングから始まる制作の裏側~」が開催されます。詳細、お申し込みは、以下のお店のWEBサイトをご参照ください。ご参加をお待ちしています!
『青山ブックセンター本店』イベント情報はこちら→http://www.aoyamabc.jp/event/meyhanetable/

 

*新刊『MEYHANE TABLE 家メイハネで中東料理パーティー』の情報はこちら→http://www.ldandk.com/3478/

 

*『Cafe BOHEMIA』のWEBサイトはこちら→http://cafe-bohemia.jp/

 

*著者の最新情報やイベント情報はこちら→「サラームの家」http://www.chez-salam.com/

 

*本連載は月2回配信(第1週&第3週火曜)予定です。次回もお楽しみに! 〈title portrait by SHOICHIRO MORI™〉

 

 

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サラーム海上(サラーム うながみ)

1967年生まれ、群馬県高崎市出身。音楽評論家、DJ、講師、料理研究家。明治大学政経学部卒業。中東やインドを定期的に旅し、現地の音楽シーンや周辺カルチャーのフィールドワークをし続けている。著書に『おいしい中東 オリエントグルメ旅』『イスタンブルで朝食を オリエントグルメ旅』『MEYHANE TABLE 家メイハネで中東料理パーティー』『プラネット・インディア インド・エキゾ音楽紀行』『エキゾ音楽超特急 完全版』『21世紀中東音楽ジャーナル』他。Zine『SouQ』発行。WEBサイト「サラームの家」www.chez-salam.com

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