風まかせのカヌー旅

風まかせのカヌー旅

#00

はじめに

 文と写真・林和代

島々を繋ぐ伝統航海カヌー、グアムの太平洋アートフェスに大集合!

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 やっぱりバスクリン・クール!
 不自然なまでに青く輝くその海の中を、灰色の背びれを時折のぞかせながらイルカたちが泳ぎ回る。
 ああ、帰って来たのねー。
 3年ぶりの海の色に満足した私は大きく伸びをした。すると、ばっしゃーん!
 不意に大波が来て、船首にいた私は水しぶきをたっぷり浴びた。と同時に、背後のクルーたちから歓声があがった。
 やーい! お前びしょぬれー! 
 そんな、どんな時も子供じみた笑いを忘れないご陽気なクルーたちと共に私が乗っているのは、伝統航海カヌー「マイス」。我々は、グアムで開催されるイベントをめざし、太平洋を鋭意航海中なのだ。  
 そのイベントとは、「festival of pacific arts」、通称フェストパック。
 南の島の人々が大集合し、2週間に渡って歌って踊り、伝統文化を披露しあう盛大な祭典である。
 なぜか日本ではほとんど知られていないが、開催は4年に1度、場所も持ち回り、ほぼすべての太平洋諸国、27の国と地域から2千人以上のアーティストが参加するという、オリンピック級の規模を誇る。
 そのプログラムは歌や踊りが中心だが、そこに混ざってこんな項目もある。
「Traditional Navigation=伝統航海術」 
 これは、コンパスやエンジンが発明されるずっと昔から島々を繋いで来た、海を渡る技術のこと。
 星のコンパスを基本に、海のうねり、海鳥などあらゆる自然をフル活用して正確に航海するこの技、かつては太平洋中の島々にあったが、文明の発達とともに廃れ、今も現役で残っているのはミクロネシアのサタワル、プルワトなど、カロリン諸島の小さな離島のみと言われている。
 しかし、40年程前から、その失われた航海術を取り戻そーぜ! という動きがハワイ、パラオ、ニュージーランドなど各地で勃発。
 その流れを受けて、今年5月、グアムで開催される第12回フェストパックでは、オープニングセレモニーとして「伝統航海術で航海カヌーが大集合!」が企画された。
 航海カヌーとは、手漕ぎではなく、帆を揚げて風で進む帆走カヌーのことで、長距離移動ができる。とはいえ、動力は風だけ。風がなければ漂流するのみ。スケジュール不能の風まかせ~な乗り物だ。
 これまでに4度、航海カヌーに乗ってきた私は、いつも乗る「マイス」もフェストパックに参加すると聞き、再び便乗する事と相成った。
 出発地はパラオ。そこから、サタワル島、サイパンなどいくつかの島を経てグアムへと向かう。
 約2ヶ月、総行程2000キロを超える航海の様子と、グアムで行われるフェストパックの模様を、今後、風まかせ~な感じでお届けしていきたい。

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*第12回『Festival of pacific arts』公式HPはこちら→https://festpac.visitguam.com/

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林和代(はやし かずよ)

1963年、東京生まれ。ライター。アジアと太平洋の南の島を主なテリトリーとして執筆。この10年は、ミクロネシアの伝統航海カヌーを追いかけている。著書に『1日1000円で遊べる南の島』(双葉社)。

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