風まかせのカヌー旅

風まかせのカヌー旅

#49

フェストパックで遭遇した、見逃せないエトセトラ。

 パラオ→ングルー→ウォレアイイフルックエラトー→ラモトレック→サタワルサイパン→グアム
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文と写真・林和代 

 

 


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チャモロビレッジ。ヤシの葉葺きの屋根とグアムの象徴、ラッテストーンを柱にした各国ブースが並ぶ。日中は暑すぎて人ではまばらだが、夕方になるとラッシュ並みの混雑になる

 

 

 フェストパックのメインは、スタジアムで行われる歌や踊りのステージだが、実のところ、スタジアム以外にこそ、この醍醐味がある、と私は思う。

 各国ブースが並ぶチャモロビレッジを始め、あちこちで小規模ながらも個性的な催しや展示が満載。

 その辺をふらっと散歩するだけで、様々なアーティストに直接会えちゃう身近さが、最大の魅力だ。

 というわけで今回は、私がフェストパックで出くわした興味津々の話題をご紹介しよう。

 

 

 From 台湾

 パイワン族のビーズ細工。

 

 

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博物館で出会った軍団の隊長さん。脇差しも渋いのである。

 

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若者二人が抱えているのが贈呈される壺。

 

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最も私ががぶりよったのはこの方。ミニな角! でかい羽! 言葉が通じなくて、角の正体は不明なまま。気になる。

 

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シャツ(?)に施されたビーズ刺繍による顔面モチーフ。妖精さんの一種じゃないかと踏んでいる。

 

 あまりの暑さに、エアコンが効いた博物館に逃げ込んだ時、入口付近で人だかりを発見。

 割り込んでのぞいて見ると、異国の時代劇みたいな装束の一団が、博物館に「壺」を贈呈しようとしているところだった。

 私の目を釘付けにしたのは、壺よりも彼らのお姿。

 カラフルなデザインビーズをふんだんに使ったその衣装は、抜群のかっこよさだ。

 顔つきから台湾と推測した私は、そのあとすぐ、ビレッジにある台湾ブースに直行。

 すると、やはりステキなビーズネックレスを発見した。

 思わず手に取ったが、値札を見ると、なんと3000ドル!! 

 あまりの数字に怯んでいると、とある女性が静かに声をかけてきた。

 

 彼女が案内してくれたブースの一角には、直径1センチのカラフルなビーズが何種類も並んでいた。

 それぞれ、不思議な幾何学模様がついている。

 1つ10ドル。

 好きなものを好きなだけ選んでブレスレットを作ってもらえるという。

 その値段なら対応可能。じゃあ、3つぐらいならと選び始めると、彼女が静かに言った。

 

「この模様にはすべて意味があるのよ」

 

 なんでもこれは台湾の少数民族パイワン族のATAと呼ばれる伝統工芸ビーズ。

 それぞれの模様には名前があり、伝説を伴う意味があって、身につけるとその力が備わるという、パワーストーン的なものらしい。 

 おしゃれな上に魔力まで!?

 私はえらく時間をかけて物色した挙句、結局彼女に選んでもらうこととなり、そのまま店先の椅子で座り込んでおしゃべり開始。

 すると、他のパイワン族も集まってきてかき氷をご馳走してくれたり、お土産をもらったり。

 不意に訪れるこんなひと時がたまらんのである。

 

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左の大きなものが3000ドルのもの。身分の高い人しかつけられないとか。右側の小さなブレスレットは30〜40ドル。

 

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ネックレスは150ドル台が中心。

 

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キュートなそろばん!

 

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ATAビーズのデザインとパワーの意味が記されたポスター。でも、こんな簡単な説明書きでは理解しきれぬ、深い意味があったりするので、もしどこかで見つけたら是非ともそのビーズの物語を聞いてみて頂きたい。

 

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写真左は、声をかけてくれたお姉さん、卡塔文化工作室の林秀慧さん。2000年前からパイワン族の中で受け継がれて来た伝統文化を学んで20年余。今や若者たちに教えてもいるアーティストである。

 

 

 

From ミクロネシア連邦

航海術のポーセレモニー

 

 第39話で紹介した離島の儀式、ポーセレモニー。

 伝統航海術のナビゲーターが一人前と認められるその儀式が、このフェストパックで行われる!

 ある日そんな噂を聞きつけ、カヌーが並ぶビーチに出かけて見ると、そこはすでにグアム在住の離島人が大集合、準備に勤しんでいた。

 

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海岸の瓦礫を使って、タロイモのウム(石焼)をする離島の女性陣。Tシャツはあったりなかったりだが、手織りのラバラバ(巻きスカート)と、ウソース(ビーズネックレス)、マラマル(花冠)という離島の正装における三種の神器は全員着用。

 

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男性はパンの実担当。こちらはスーと呼ばれる伝統的な衣装、ふんどし着用。

 

 

 聞けば今回、サタワルの永遠のライバル、プルワトの導師によるセレモニーで、この儀式で晴れてポーになる生徒もプルワトを中心とする方々5名だそうだ。

 なので、集まっているのはプルワト系の人々。とはいえ、プルワト、サタワル、ラモトレック辺りの離島は、結婚やら養子やらで親族が入り混じっていて、私の知人であるサタワル人の顔もちらほら。

 それに、導師のお手伝いをする先生役には、セサリオの親戚、ラモトレックのマスターナビゲーター、アリがついていた。彼はプルワトの導師の親族でもあるらしい。

 

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晴れてポーになられる5人のナビゲーターの方々。ターメリックをたっぷりぬられて、やや緊張気味。

 

セレモニー
まずウープットと呼ばれる椰子の若葉を編んだものを、導師が呪文を唱えながら腕に巻き(左)、続いて、軍艦鳥の羽やサンゴ石など魔法アイテムが包まれたブレスレットも巻いてもらう(右)。

 

 

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本来ならカヌー小屋の中で、パンダナスのマットレスに座るのだが、今回はテントの中でパイプ椅子というイレギュラーな体制で行なわれた。
写真左にある舟形の木彫りの器、サピアン・ポーに、人々がパウンドしたパンの実とタロイモ、ココナツミルクをたっぷり入れて、黒蝶貝で飾る。これにも呪文をかけてから、ヤシの葉で作ったバスケットに取り分け、生徒たちが食べる。これで魔法の力もいただく、という寸法。

 

 

 概ね2時間の儀式は、たくさんの観光客に見守られつつ無事に終了した。

 本来ならば2〜4日かけて、島民総出で行う儀式がたったの2時間。

 当然、多くが簡略化されたわけで、さすがに無理があるなあ、と思ったし、手伝ったアリも思うところが随分あったようだが、それでも観光客にあまりにもマイナーなこの世界を「紹介」するという意味では、良かったかと思う。

 

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メインの儀式が終わると、周囲を囲んで座る女性たちが、身ぶり付きでナビゲーターソングを歌いつつ祝う。声量、ハーモニー、とにかく圧巻! 離島女性の歌はいつだってエネルギッシュである。

 

 

 

From グアム

タトゥ

 


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写真中央がフィリップ・サブラン。私の居候先の家主であり、かつてのマイスクルーであり、タトゥアーティスト。

 

 今回、私が居候させてもらったグアムの知人フィルことフィリップ・サブランは、かつて共にマイスで2度ほど航海したカヌー仲間であるが、本業はタトゥアーティストだ。

 太平洋諸島には古くからタトゥの習慣があり、特に身分の高い人ほど広い面積に施す習わしだったと言う。そのデザインは、イルカやカヌー、波など海に関するものを幾何学的にしたものが多い。

 フィルはそうした伝統的なデザインに独自のアレンジを加えたタトゥで、世界を舞台に活躍している。 

 今回のフェストパックでは、彼のタトゥショーがスタジアムで行われた。

 マイスでの付き合いしかなかったので、早口が止まらないウッドペッカー系の愉快なおじさんとばかり思っていたが、立派なアーティストであることを改めて確認。

 

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フィルのタトゥショーのリハーサルにて。

 

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すべてフィルによるタトゥ。ポスターはミクロネシアのカヌーをモチーフにした彼のショップ「taotaomona tatoo studio」のロゴで、Tシャツもある。ショップはチャモロビレッジにある。

 

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離島のナビゲーターたちの多くは、フィルのタトゥーをこよなく愛している。そしてこのフィルは、そんなナビゲーターたちを尊敬しているため、望む人には無料でタトゥをしてあげている。その数、30名以上! 今回は我がクルー、ミヤーノも足にイルカ模様を入れてもらい、ご満悦。しかし、キャプテン・セサリオだけは入墨嫌いで、フィルがいくら勧誘しても決して入れようとしないのであった。

 

 

 

 

 

番外

フェストパック・マニア!

 

 私の居候先にはもう一人、フランス人男性の居候もいた。

 彼は、フェストパックが大好きで、かれこれ5回も追いかけているという。

 4年に一度のイベントを5回とは、驚くべきド根性。

 彼は日々プログラムを常に熟読し、見逃せないイベントやアーティストを追いかける。

 しかし、この男、ただ見物するだけではない。

 エッフェル塔を青く塗る、そして世界中の「平和」や「ありがとう」の言葉を集める、というドリーミンな平和活動を独自に展開しておられる。

 今回は、どこかで親しくなったチームのブースの一角を借りて、手作りの青いエッフェル塔の絵や世界のコンニチハ、アリガトウを集めた青塗りの石を独自に展示!

 その親しいチームが帰国する際には、見送りに行きたいが金がない、と言って、灼熱地獄の中、空港まで40分も歩くなど、かなりのエナジーをお持ちである。

 

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フェストパック・マニア、ジェフ君(右)お手製の平和ボード! 観光客がこうして写真を撮ってくれるのが何よりのヨロコビ。

 

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空きビン、あきかん、ヤシの実、石、板の切れっ端etc. なんでも拾って青く塗り、いろんな人にピースフルな言葉を描いてもらい、あちこちに展示。

 

 

 時折、フェストパックの記事をフランス語圏のニューカレドニアの通信社に送ったりしていたが、その経済は謎。

 しかし、彼はその後もニューカレドニアやニュージーランドを転々としながら、彼の地で開催される様々なフェスティバルを準備段階から手伝っている模様。

 目下の目標は、2025年に開催予定の万博を是非とも大阪で開催させたい、だそうである。

 こんな愉快な変わり者に出会えるのも、フェストパックならでは(?)かもしれない。

 

 次回は、写真をどっさり放出する予定。乞うご期待!

 


 


*本連載は月2回(第1&第3週火曜日)配信予定です。次回もお楽しみに!

 

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林和代(はやし かずよ)

1963年、東京生まれ。ライター。アジアと太平洋の南の島を主なテリトリーとして執筆。この10年は、ミクロネシアの伝統航海カヌーを追いかけている。著書に『1日1000円で遊べる南の島』(双葉社)。

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