旬の地魚を味わう全国漁港めぐり

旬の地魚を味わう全国漁港めぐり

#15

駿河名物てんこ盛り!「富士山海道船弁」

「本当に旨い魚を現地でいただく!」をテーマにお届けする「全国漁港めぐり」。
今回は静岡県を代表する港街、静岡市の清水港から。
「清水港ランチクルーズ」体験をお届けします。

 

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SHIZUOKA
――SHIMIZU
【静岡県静岡市清水区】http://www.city.shizuoka.jp/shimizu.html

 

 

 

 唐突だが、日本一深い湾がどこかご存じだろうか? 

 

 答えは静岡県の駿河湾。最も深いところでは2500メートルもある。そして、この深い海から陸に目を向ければ、標高3776メートルの霊峰、富士山が聳える。つまり、静岡県は海と陸の日本一を有しているということになる。駿河湾の最深部から富士山頂までの高低差は6276メートルにもなり、冒険家の植村直己が遭難した北米マッキンリー山の標高を超える。その日本一深い湾と日本一高い山の境目にあり、国際拠点港湾に指定されているのが清水港だ。国際拠点港湾というのは、国際海上輸送網の拠点として特に重要な港のことで全国に18ヵ所しかない。要するに港の格付けが非常に高いということで、まあ平たく言えば偉い港なのである。

 

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「清水みなとクルーズ」ベイプロムナード号の甲板より富士を望む。取材当日は雨まじりの天気だったが、束の間その美しい姿を披露した。

 

 

 この清水港が今回の舞台。

 清水と聞いて、思い浮かべるのは何だろう。清水エスパルス? ちびまる子ちゃん? はたまた清水の次郎長? いえいえ、清水といえばやっぱりマグロ。漁港めぐり的には、マグロの水揚げに注目したい。静岡県のマグロ水揚げ量は29,658tで、ダントツの日本一で全国の17.5%のシェアを誇る(2017年調べ)。そして、焼津、沼津など強豪ひしめく静岡県の中でも清水港がトップに君臨する。やっぱり清水に行ってみなければいけないでしょう。というわけで、早朝の新幹線「ひかり」号で静岡を目指した。令和元年7月上旬、静岡市観光振興の為に開催されたプレスツアーにお邪魔したのだ。

 

 夢の超特急として名を馳せた「ひかり」だが、エースの座を「のぞみ」に譲ってからは本数も減り、だいたい1時間に1本ペース。すっかり影の薄い存在となってしまった。静岡駅は、そんな貴重な「ひかり」号の恩恵を最も受ける駅といえる。東京からも名古屋からもおよそ1時間ほどで着く。「のぞみ」気分でうかうか眠りこけていると乗り過ごしてしまう近さだ。ここで東海道線の普通列車に乗り換えて、東京方面に向かう。東静岡、草薙、そして清水。静岡から3つ目、約10分だ。駅前は整然としていて、港街っぽい面影はない。かつての清水市は、2003(平成15)年に静岡市と合併し、現在は静岡市清水区だ。清水港の歴史は古く、今年で開港120周年。神戸港、長崎港と並ぶ日本三大美港に数え上げられている。世界文化遺産にも登録された三保松原(みほのまつばら)のある三保半島が天然の防波堤となり、波も穏やかなことから船の航行に適しているのだ。

 

 まずはこの清水港を周遊する「富士山清水みなとクルーズ」をご紹介したい。船上からは伊豆半島、箱根、愛鷹連山、そして日本一の富士山を望むことができ、まさに美港をめぐる旅を堪能できる。「富士山清水みなとクルーズ」、「三保松原ミニクルーズ」、「ふなべんランチクルーズ」などの定期運航のほか、「フルーツクルーズ」「貸切チャータークルーズ」など各種団体向けクルーズプランも用意されている。

 

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乗船したエスパルスドリームフェリー「ベイプロムナード」号(最大旅客定員343名)。

 

 この日は「ふなべんランチクルーズ」に乗船。特筆すべきは、ここで提供された「富士山海道船弁」(冒頭の写真)。静岡の名産をこれでもかというぐらいに詰め込んだお弁当。静岡てんこ盛り! もう大変である。静岡には名物が多すぎる。金目の塩焼き、桜えびのかき揚げ、黒はんぺんフライ、桜えび・釜揚げしらすご飯、茶飯稲荷、……安倍川餅。箱の中のレイアウトも美しく、富士山の形にしたゴハンの上に桜えび、錦糸玉子、釜揚げしらすが盛られている。食感も良く、どれも美味しい。桜えびは言うに及ばず、静岡名物黒はんぺん、駿河湾の深い海で獲れたしらすなど地元の名物食材ばかり。そして静岡茶まで付く。静岡が食の都であることを改めて実感することとなった。


 

 

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掛け紙もステキな「富士山海道船弁」。大人2,880円 小人2,330円(いずれも乗船料・食事代・消費税込/2019年10月1日以降)※お弁当には「静岡のお茶缶」付き。※2名以上14名以下の対象商品。

 

 お弁当の掛け紙には、富士山を望む駿河湾を往くフェリーが描かれている。そして、県道223という標識が。そう、駿河湾フェリーだ。静岡市の清水港と伊豆半島の土肥港を約70分で結び、自動車と旅客を同時に輸送することができるカーフェリー。だから、県道223(フジサン)というわけだ。

 静岡市と伊豆半島を結ぶ貴重な生活航路であると同時に、海からの富士を望むことができる日本が誇る絶景航路でもある。この景観を目当てに乗船する観光客も多い。日本一深い紺碧の駿河湾の海上から眺める富士山はやはり格別だし、ドライバーもサイクリストもゆったりと船の上で休憩することができるのだから当然といえる。近年はインバウンドの外国人観光客の姿も目立つ。

 この駿河湾フェリー、今年6月に運営会社が変わった。近年、伊豆半島への道路網が整備されたことで、皮肉にも利用客が減り、航路の維持が難しくなったからだという。静岡県と駿河湾沿岸3市3町(静岡市、下田市、伊豆市、西伊豆町、松崎町、南伊豆町)は、一般社団法人を設立して運営を継続することになった。運航業務はエスパルスドリームフェリーが事業の引き継ぎ後も担うという。現在も航路存続への努力が続いている。この記事を読んで興味を持たれた方はぜひ乗船してみて欲しい。船旅好きとしては、ぜひとも残してもらいたい航路だ。

 

 

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「駿河湾フェリー」[ROUTE 223]は、清水港~土肥港を約70分で結ぶ。伊豆半島への貴重な絶景航路。天候が良ければ船上から駿河湾越しの富士山が望める。

 

 船内でランチを堪能し、3Fデッキに出ると眺望が開けた。「ベイプロムナード」号のデッキは屋上にあるので、開放感あふれる360度のパノラマを楽しめるのだ。取材当日は生憎の曇天だったが、雲間から名峰富士の高嶺が姿を現し、しばし見惚れる。眺めに見とれていると、一風変わった船舶が係留されていることに気付く。船上に櫓のようなものを備えている。

 

「ちきゅう号です」

 

 静岡市広報課の橋口主任が教えてくれた。

 

「ああ、あれがちきゅう号ですか…」

 

 って違う。ちきゅう号が何かを知らない。

 

 地球深部探査船「ちきゅう」は、海底下をより深く掘削するため、ライザー掘削技術を初めて科学研究用に導入した科学掘削船。つまり、深海の海底を掘削できる探査船が「ちきゅう」号だ。この清水港を母港とし、次の仕事までしばらくの間、停泊しているという。深い水深の海底下を地球の深部まで掘り進む、大水深・大深度掘削のための設備を備えており、南海トラフをはじめとする巨大地震発生の仕組みや、新しい海底資源の解明などが期待されているのだ。

 

 知らなかった。でも、日本の科学技術の粋を集めたようなすごい船、背景に富士山を入れて写真に収めてみた。地球深部探査船「ちきゅう」に興味を持たれた方は、JAMSTEC のホームページを見てみて欲しい。なかなか好奇心をくすぐる船だ。
  

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地球深部探査船「ちきゅう」号は、今年4月に紀伊半島沖の掘削調査を終え、清水港に寄港。次のお仕事に出かけるまでの間、富士をバックに興津第2埠頭に係留されている。

 

 船が発着する桟橋から程近く、カラフルな建物が見える。エスパルスドリームプラザという複合商業施設だ。清水港(国際貿易港)開港100周年の節目にあたる平成11年(1999年)10月8日にオープンした。そうここ清水は、Jリーグ清水エスパルスの本拠地。そういえば「ベイプロムナード」号の船体にもエスパルスのマークがしっかりと描かれていた。館内には、「清水すしミュージアム」や「ちびまる子ちゃんランド」など魅力的なミュージアムやショップ、エンタテインメントが充実しており、思い思いに楽しむことができる。駅からも近いし、港に隣接しているのでアクセスは良好だ。海と親しむことができるビーチもあるから、ちょっとしたリゾート気分も味わえる。

 

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ランドマークとなっている観覧車「ドリームスカイ」は1周約13分、地上高52m、清水港を空から楽しめる。

 

「エスパルスドリームプラザ」https://www.dream-plaza.co.jp/

 

 

 とっても気になるのは、日本初のすしのテーマパークとして誕生した「清水すしミュージアム」。「清水すし横丁」(入場無料)と、2Fの「鮨学堂(すしがくどう)」を中心とした有料ゾーンとに別れている。「清水すし横丁」では、江戸前寿司から回転寿司まで、鮨処清水の個性豊かな名店8店舗が軒を連ね、腕を競い合う。全店を巡って、利き寿司なんて夢のような食べ歩きをしてみたいところだが、すでに船上で美味しい船弁で昼食を済ませていたので、今回は清水の寿司を断念。空腹状態での再訪を期して、泣く泣く見学のみとなった。

 

 エスパルスドリームプラザには、この他にも静岡県下のおいしい! がたっぷりつまった「駿河みやげ横丁」や「清水いりふね通り」など魅力的なエリアがあり、ここだけで一日過ごしてもいいんじゃない?ってほど充実している。なかでも注目したのは、「清水ラムネ博物館」、「清水かんづめ市場」、「ちびまる子ちゃんランド」という清水ならではの3施設。ラムネ、缶詰、ちびまる子、いずれも昭和レトロなテイストを感じることができるのが共通している。ここにしかないレアアイテムを探し、買い物を楽しめるだけでなく、歴史や雑学を学ぶこともできるからアミューズメントの要素もたっぷり。

 

清水ラムネ博物館
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「清水いりふね通り」の一角にある「ラムネ博物館」。意外と知られていないラムネやサイダーの歴史。大正~昭和初期の貴重なラムネビンや、当時使用されていた機械の展示、普段見ることのできないサイダーの製造風景の映像を観覧できる。ラムネ・サイダーの製造販売の老舗、木村飲料の商品が55アイテム一挙に揃う。

 

「清水かんづめ市場」

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同じく「清水いりふね通り」にある「清水かんづめ市場」。清水はツナ缶日本一の町! ツナ缶、カツオ缶をはじめ、さまざまな種類の缶詰が揃う。清水の缶詰の歴史は昭和初期に遡る。昭和4年に清水食品㈱が創立、昭和6年にははごろもフーズの前身である後藤缶詰所が創業。昭和7年には清水水産㈱が操業して清水三大缶詰会社が勢揃いした。昭和7年の清水港の輸出額ではお茶に次いで缶詰が第2位を占めるようになったという。

 

ちびまる子ちゃんランド

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「ちびまる子ちゃんランド」は、ドリームプラザの3Fにある。さくら家、学校、公園などちびまる子ちゃんの世界が楽しめるミュージアム。子どもはワクワク、大人には懐かしい昭和の雰囲気たっぷり。ちびまる子ちゃんランドオリジナル商品をはじめ、ステーショナリー、お菓子、書籍などちびまる子ちゃんグッズのラインナップは随一。【料金】大人(中学生以上)600円、小人(3歳以上)400円 ※2歳以下は無料 【営業時間】午前10:00~午後8:00(最終入館午後7:30)【定休日】無休


 

 アニメ「ちびまる子ちゃん」は、清水を舞台に小学生のまる子の日常を描いた作品だが、懐かしの学校給食を再現した食堂が「ちびまる子ちゃんランド」に隣接している。「みんなの学校給食」というその食堂では、ソフトめん、あげパン、冷凍みかん…、昭和の小学校にタイムスリップしたような給食メニューを実際に食べられるうえ、椅子も机も当時の小学校そのもの。誰もが童心に帰ることができちゃうのだ。ドリンクメニューでは、ミルメーク付きの牛乳に注目。ミルメークをご存じない方もいらっしゃるかと思うが、給食の牛乳に入れる調味料みたいなもの。地域によって給食に出たり出なかったりとマチマチなのだが、いちご味やコーヒー味、ココア味などいろいろ種類があって、牛乳が苦手な人でも飲めるというわけ。実を言えば、記者の地元では給食にミルメークは出なかったので、初体験だったのだが…。とりあえずコーヒー味をチョイスしてみると、コーヒー牛乳風でなかなかオツな味。懐かしいという人も初めての人も、ぜひお試しあれ。

 

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「みんなの学校給食」は「ちびまる子ちゃんランド」と同じ3Fにある。ともに小学生時代を思い出しちょっぴりノスタルジックな気分に浸れる施設だ。

 

 

 このエスパルスドリームプラザだけでも存分に静岡清水を堪能できちゃうのだが、マグロの街、清水には嬉しいチケットがある。

 

「スイスイ♪清水港まぐろきっぷ」

 

 どういう内容かというと、清水港の水上バスと、しずてつジャストライン清水駅~三保区間が一日乗り放題で、提携店での1000円分の食事券、観光施設の利用券および割引券がついて大人¥2,280、小人(3歳以上)¥1,980。清水港の旨いまぐろと、富士山と三保松原が楽しめるというのがウリだ。あまり知られていないが、清水エリアで意外と便利なのが水上バス。清水港は天然の良港であることは冒頭で紹介したが、波が穏やかなので船の航行に適している。だから、水上バスが重宝されるのも当然だ。ひとまず、三保へ。

 

 羽衣伝説で知られる国の名勝・三保松原は、万葉の昔から白砂青松と霊峰富士の眺望の素晴らしさで全国区の知名度を誇る。2013(平成25)年に世界文化遺産「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」の構成遺産として登録されたことで、再び脚光を浴び、いま注目のスポット。三保から富士山頂までは約45キロの距離があり、25ヵ所ある構成遺産の中で富士山から最も遠いのだが、古より富士山と深いかかわりがあったことが大きく影響したという。

 歌川広重の冨士三十六景をはじめ、江戸時代には富士と松原を題材にした浮世絵が多数描かれているし、もっと遡れば、室町時代に東海道から富士山頂に至る広大な景観を描いた「絹本著色富士曼荼羅図」においても、三保松原は富士山へ向かう入口として描かれているのだ。この曼荼羅図は、「みほしるべ」という施設に展示されている。実物大のレプリカだ。2019年3月30日にオープンしたばかりの綺麗な建物で正式名称は「静岡市三保松原文化創造センター」というのだが、「みほしるべ」の方がはるかに覚えやすい。「三保を知る」と「道しるべ」という二つの意味を持ち、一般公募で名付けられたそうだ。松原の入口に、松林に調和した佇まい。三保松原の新しい観光拠点としてオープン後約1カ月半で来館者が10万人を突破した。

 

 

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「みほしるべ」https://miho-no-matsubara.jp/center/

静岡市清水区三保1338-45
一般車駐車場173台(無料)
しずてつジャストライン「三保松原入口」から徒歩15分
<開館曜日>年中無休
<開館時間>9:00~16:30
<入場料>無料

 

 富士山というと銭湯を連想する人も多いのではないだろうか。そんなに多くないか…。でも、銭湯と言えば、壁に描かれた富士山の絵を思い浮かべる人は多いだろう。初めて富士山の絵が描かれたのは東京千代田区にあった「キカイ湯」という銭湯だったと言われていて、大正元年のこと。それは、三保松原から富士山を望んだ風景だった。ということは、銭湯壁画=三保松原という図式が成り立つ。その絶景をぜひナマで見たいと、砂浜へうち出でてみれば、生憎の曇り空。肉眼ではうっすらと富士の姿が拝めたが、技術が未熟なため写真には写せなかった。無念。ちなみに天候が良ければ、「みほしるべ」の屋上からも美しい富士の姿をバッチリ望めるそうだ。

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三保松原に広がる砂浜。残念ながら天候に恵まれず、富士の姿を捉えることができなかった。 
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羽衣の松。御穂神社のご神体で、祭神の三穂津彦命・三穂津姫命が降臨する際のよりしろ(目印)とされ、およそ500mの松並木「神の道」を経て御穂神社へと通じている。天女が羽衣をかけたとされる羽衣伝説で有名な松だが、現在は三代目。初代の羽衣の松は今の松よりかなり沖にあり、波にのまれてしまったと言われ、二代目の羽衣の松も樹齢650年を越えて衰弱したため世代交代した。

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「神の道」。樹齢200年以上の松並木が約500m続く風雅な道で、2008年(平成20年)木製の遊歩道が整備された。羽衣伝説ゆかりの御穂神社から三保松原にあるご神体「羽衣の松」へと続く。

 

 清水港遊覧、エスパルスドリームプラザ、三保松原と存分に静岡市清水区の魅力スポットを巡り、満足したところで帰路につく。でも肝心なマグロを食べていないことに気付く。それは次回のお楽しみとしてとっておこう。

 

しずおか観光情報 https://www.visit-shizuoka.com/

 

 

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