石巻/牡鹿半島 絶景・美食・縄文

石巻/牡鹿半島 絶景・美食・縄文

#12

写真で語る、奥松島・石巻の魅力<後編>

 

 「石巻・牡鹿半島」連載の第12回目は、韓国人紀行作家のチョン・ウンスクさんによる寄稿ルポの日本語版(後編)をお届けする。当サイト「TABILISTA」では、『韓国の旅と酒場とグルメ横丁』を連載していただいている。ソウル在住のチョンさんは、アシアナ航空の仁川ー仙台直行便を利用して訪日。韓国済州オルレの姉妹道として昨年オープンした宮城オルレ奥松島コースを体験取材。今回は、韓国語バージョンと日本語バージョンの2つに分けてお送りする。

韓国語バージョンはコチラ

 

 
文/チョン・ウンスク

 

 

1月末、宮城県石巻市の観光関係者と双葉社のお招きで、奥松島と石巻市街を旅する機会に恵まれた。東北最大の都市・仙台以外の宮城の魅力を我が国の人たちにもっと知ってもらうために韓国語の旅行記を書くのが目的だったが、日本でも宮城=仙台と短絡してしまう人が少なくないので、今回も前回に続き、写真を見ながら奥松島や石巻の魅力をお伝えしよう。

 

 

 

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照ったり、降ったり、曇ったり。

石巻の空模様は常に一定ではなかったが、それが旅の印象に深みを与えてくれた。写真はオルレ(散歩道やトレッキングコースを表す済州方言)奥松島コースのタブノキ(神木)辺り。

宮城オルレに関する詳しい情報は下記で。

https://www.miyagiolle.jp/

 

 

 

宮城オルレの道(さとはま縄文の里→タブノキ→波津々浦→陸の奥松島→月浜海水浴場)

 

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タブノキに向かう丘を登りながら、さとはま縄文の里史跡公園を振り返って思い出したのは、1993年に公開された韓国映画の名作『風の丘を越えて』(原題:西便制)。パンソリの道を究めんと、いばらの道を進む父と娘、息子の3人が劇中、唯一楽し気に歌い踊りながら歩く場面だった。

 

 

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『風の丘を越えて』の名場面が撮影された青山島(全羅南道)。季節が違うこと、そして撮影地の観光整備が進んだため、ピンとこないかもしれないが、ぜひ映画の該当シーンを観てもらいたい。

 

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海からの風が強く吹き込むため、風越峠(かざこしとうげ)と呼ばれている場所。復興事業だろうか、トラックがたびたび往来する通りで警備をする男性が、「だから風除けが必要なんです」と教えてくれた。写真の青い帆のようなものがそれ。

 

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ウォーカーズ・ハイとでもいうのだろうか。同行者と言葉も交わさず、黙々と歩いているだけで心が浮き立ってくるのはなぜだろう。いくら歩いてもつらくない。こんな素敵なコースを選んでくれた韓日のオルレ関係者に感謝したくなった。

 

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ウッドチップをぜいたくに敷いたオルレの道。まだまだ元気なつもりだが、50歳を過ぎて膝が以前のままとはいえなくなってきたので、やわらかい踏み応えはありがたい。

 

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民宿がぽつぽつとある漁村で出会った子供たち。オフシーズンで人通りが少ないせいか、我々に興味津々。下のワンちゃんは大柄なので男の子かと思ったら女の子だった。ヘアスタイルに注目。

 

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同行してくれた双葉社のSさんは、40代にして47都道府県をすべて訪問した旅の達人。オルレを歩く後ろ姿はまるで仙人のようで、見とれてしまった。

 

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この日の目的地、月浜海水浴場に到着。前日とはまた違った表情を見せてくれた。

 

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オルレ散歩の後、一服するために立ち寄った『KIBOTCHA』で食べた蒸し牡蠣。『KIBOTCHA』は震災後、廃校になった小学校を住民たちが防災教育センターとして再出発させたもの。宿泊施設やレストランもある。

http://kibotcha.com/

 

 

地元民や復興事業関係者が集う酒場で

 

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石巻線・渡波(わたのは)駅から今回の宿『Sun Fan Village』に向かう途中にある居酒屋『金魚』。この店の外観を見て思い出したのが、小栗康平監督の映画『眠る男』(1996年)。我らが国民俳優アン・ソンギが出演し、日本の役所広司やインドネシアの名優クリスティン・ハキムと共演したことで話題に。劇中、クリスティン・ハキムがホステスとして働いていたスナック(マスター役は岸部一徳)が、まさにこんなたたずまいだった。
『金魚』は、この辺りのタクシー運転手さんなら誰でも知っている有名店だ。魅力的な姉妹が客席を回って話し相手になってくれるので、居酒屋+スナックといった雰囲気。ママは筆者が韓国から来たと知ると、「ソ・ジソプの大ファンなの~」と喜んでくれた。客層は地元民6、復興事業関係者4くらいの印象。私たちの隣の席で飲んでいたグループは後者で、関西弁で楽し気に話していた。彼らは筆者が利用した『Sun Fan Village』の長期滞在組だ。

 

 

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『金魚』で初めて食べた金華サバ。南三陸金華山周辺で定置網、または一本釣り、あるいは巻き網で獲れた大型のマサバのみが金華サバを名乗れるという。韓国人、とくに釜山人はサバと聞けばマッコリを連想するが、身も、少し焦げた皮も味が豊かな金華サバはマッコリよりも日本酒が合いそうだ。いや、それでも次回は韓国からほどよく甘い生マッコリを持ち込み、相性を確認してみたい。また、機会があれば金華サバの寿司も食べてみたい。

 

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『金魚』では数種類の日本酒を頼んだ。どの銘柄がどんな味だったのか記憶があやふやだが、すべて美味しくいただいた。面目ないが、そういう酒飲みなのである。韓国人から見た日本酒の魅力は、味や香り、背景にある歴史やドラマなどだが、筆者は日本酒の大きな一升瓶が大変気に入っている。韓国にもこのサイズの酒瓶はあるにはあるが、あまり一般的とはいえない。

 

 

早起きして石巻魚市場へ

 

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石巻魚市場の建物の2階はガラス張りの長い通路になっていて、そこからセリの様子を俯瞰することができる。働く人々やフォークリフトの動きは整然としていて、韓国の魚市場とは明らかに違っていた。筆者はアポなしで訪問したにも関わらず、運よく親切な職員の方に許可をいただき見学できたが、本来は事前の申し込み(下記URL参照)が必要。

http://www.isiuo.co.jp/Top/tour/

 

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韓国でも釜山をはじめ各地の魚市場を見学したことがある。セリをしている人たちには近づけないような荒々しい雰囲気があったが、ここではまったくそれが感じられなかった。

 


セリの声は韓国と比べて声量も小さめ。近くで耳を澄ませたが、早口なうえ符丁のような言葉が多く、まったく聞き取れなかった。

 

 

市場メシ体験

 

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築地の場外や釜山の共同魚市場のように、市場周辺には食堂や屋台がズラリと並んでいるのではと期待して来たが、確認できたのは石巻市水産総合振興センター1階にある『斎太郎食堂』(06:30~14:30、無休)のみ。とてもきれいで明るい食堂だった。職員の女性が客に親し気に話かけていたので、毎日通っている人が多いのだろう。

注文は日本らしく食券制。メニューには魚介ももちろんあるが、客席を見回すと肉料理や麺、チャーハンなどを食べている人が多かった。漁業関係者は魚は食べ飽きているということなのだろう。釜山でもチャガルチ市場の近くに、ホルモン焼きの店が集まっている一画があることを思い出した。

 

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日替わりメニューの二色丼1200円。ネギトロとウニたっぷりが盛られている。

 

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テレビを見るためでもあるのだろうが、客がみな同じ方向を向いて座り、静かに食事している様子にも日本らしさを感じる。

 

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万石橋(まんごくばし)のたもとにある『石浦鮮かき工場』。ふらっと訪れたのだが、こころよく見学させてもらえた。身を殻から取り外す作業は季節労働で、1人で1日200キロぐらいをこなす。この仕事で稼ぎ、オフシーズンは遊んで暮らす人もいるという。慶尚南道の統営(トンヨン)で同様の工場を取材したことがあるが、韓国では中高年の女性の仕事だった。

 

 

寅さんがふらっと入ってきそうな駅前食堂

 

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韓国でも日本でも取材となると、その地の産物を生かした“ごちそう”を食べることが多い。だが、市井の人が日常的に食べているものを味わってこそ、その土地を知ることになるのだといつも思っている。渡波(わたのは)駅の真向かいあった『みうら』にも、まさにそんな気持ちで入った。大好きな日本映画『男はつらいよ』でも、寅さんがヒロインと出会うのはたいていこんな大衆食堂だ。

 

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『みうら』に入ったとたん、カレーの匂いを感じた。カレーライス? いや、カレーうどんを食べている客が多いのだ。筆者はカレー好きで、日本に来るたびにチェーンの『ココ壱』で食べるのが楽しみである。早速注文。カレーは『ココ壱』のような洗練された味ではなく、少し甘味のある家庭的な味だった。魚市場取材で早起きし、あちこち歩き回って冷えた体があたたまる。この季節の人気メニューである理由がよくわかった。

 

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同行者が頼んだ海老天そば。東北地方らしい濃い目の汁を吸った海老天の衣や天かすが美味しかった。

 

 

 

石巻駅前散歩ふたたび

 

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こんにちは~、こんにちは~

顔見知りかどうかなど関係なく、大人と子供の間であいさつが交わされるのを石巻のアイトピア通りで何度も見た。震災後の教訓として習慣化したのだろうか、それ以前からそうなのだろうか。こういうのを“美風”というのだ。筆者の20年来の友人、北山節子(接客アドバイザー)の「あいさつは相手に興味をもつきっかけ。あいさつが事故や犯罪を未然に防ぐ」とう言葉を思い出した。

 

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営業しているのだろうか? 店の外に突き出した立飲み用と思われるバーの感じからすると、閉めてしまったのだろうか。外からはわからなかったが、ガラス窓の「復興バー」の文字が目に焼き付いた。

 

 

酒蔵見学、印象的だったのは人(その①)

 

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石巻の関係者の尽力で、宮城の名酒『日高見』の醸造元である平孝酒造を見学することができた。ここでもっとも印象的だったのは5代目社長の平井孝浩さん(56歳)、その人。美男だからではない。韓国でも酒蔵といえばかつては富豪の象徴で、酒蔵の息子と聞けば豊かさだけではなく洒脱さを感じたものだ。平井さんはそれを絵に描いたような人。何を聞いても答えは明瞭で“皐の鯉の吹き流し”のようにすがすがしい。少々辛口な物言いにも嫌味がなく、腹を割って話していることが伝わってくる。韓国からの旅行者が見学に来た場合の対応についても、前向きな話をしてくれた。日高見ブランドの味を現地で確かめるのはもちろん、ぜひ平井さんに会いに行ってもらいたい。

 

 

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平孝酒造の日高見ブランドは、旧北上川に沿った仲町通りにある『いしのまき元気いちば』でも買うことができる。

 

 

製麺所見学、印象的だったのは人(その②)

 

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取材最終日の前夜、石巻市泉町にある『茶寮 景松庵』での会食で知り合い、その翌朝、自社の製麺工場で見学・試食をさせてくれた島金商店の島英人社長。石巻で会う人会う人、総じて奥ゆかしかったなかで、島さんは抜きん出て明朗快活だった。大きな声とさわやかな笑顔。スタッフの仕事ぶりを見ていられず、自らフライパンをふったり、料理を盛り付けてくれたり。

有限会社 島金商店 http://www.shimakin.jp/

 


韓国の麺食の醍醐味がチャジャンミョン(ジャージャー麺)の麺とタレを豪快に混ぜる場面だとしたら、日本のそれは焼きそばをフライパンで炒めるときかもしれない。島金商店の試食室で。

 

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石巻発祥の茶色い焼きそば。最後に目玉焼きをのせてアクセントに。韓国人にも受けそうなビジュアルだ。
石巻焼きそばに関する情報は下記で。
http://www.makisoba.jp/

 

 

新幹線に乗る前に仙台の横丁へ

 

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取材最終日に仙台に立ち寄った。目当ては韓国でも大人気のレトロテイストの店が集まっている『壱弐参(いろは)横丁』。オフィスビルが立ち並ぶなかで、市場風の街並みが残されているのを見て、我がソウルの再開発で撤去の危機に瀕している乙支路3街~4街を思い出してしまった。

http://www.iroha-yokocho.jp/

 

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「金儲けよりも日々の安らかな暮らしがたいせつ」

『壱弐参横丁』にある古道具店『大坂や』の主人は、故郷の石巻で被災して以来、人生観が変わったという。以後、高価な骨董品だけでなく、生活に潤いを与える廉価な食器なども扱うようになった。趣のある絵皿が数百円で売られていたので、飲食店経営者などがまとめ買いして帰るそうだ。筆者も友人たちへのおみやげに数枚求めた。

 

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『壱弐参横丁』でふらっと入った居酒屋『さしすせそ』で、福島県須賀川市出身の若いマスターと。筆者の日本留学時代、埼玉県志木市でアパート暮らしをしていたときに通った『春屋』という居酒屋によく似ていた。

 

今回、石巻では漁業関係者、商店主、実業家、市会議員、県会議員など多くの人たちのお世話になり、本当にありがたかった。仁川⇔仙台はアシアナ航空で結ばれているので、心理的にも近い。次回はもうひとつの宮城オルレ「気仙沼・唐桑コース」を踏破してみたい。

 

 

*4月21日(日)、本コラムの筆者チョン・ウンスクが名古屋の栄中日文化センターで講座を行います。テーマは、『心で話そう! 韓国人の心を開く韓国語&コミュニケーション術』(2時間×2コマ)。お申込みは、3月7日(木)午前10時より、下記のフリーダイヤルやホームページで。

0120-53-8164

http://www.chunichi-culture.com/center/sakae/

 

*筆者の近況はtwitter(https://twitter.com/Manchuria7)でご覧いただけます。

 

 

 

*本連載は月2回配信(第1週&第3週火曜日)の予定です。次回もお楽しみに!

 

 

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紀行作家。1967年、韓国江原道の山奥生まれ、ソウル育ち。世宗大学院・観光経営学修士課程修了後、日本に留学。現在はソウルの下町在住。韓国テウォン大学・講師。著書に『うまい、安い、あったかい 韓国の人情食堂』『港町、ほろ酔い散歩 釜山の人情食堂』『馬を食べる日本人 犬を食べる韓国人』『韓国酒場紀行』『マッコルリの旅』『韓国の美味しい町』『韓国の「昭和」を歩く』『韓国・下町人情紀行』『本当はどうなの? 今の韓国』、編著に『北朝鮮の楽しい歩き方』など。NHKBSプレミアム『世界入りにくい居酒屋』釜山編コーディネート担当。株式会社キーワード所属www.k-word.co.jp/ 著者の近況はこちら→https://twitter.com/Manchuria7

★次回は、石巻がこれから目指す観光モデル、アルベルゴ・ディフーゾ(AD)についてご紹介します。イタリアで地震被害の復興プロジェクトから始まったADはいまやヨーロッパ各地に広がっています。ローマ在住の紀行作家、田島麻美さんがAD発祥地イタリアのアドリア海沿いの港町テルモアのADを現地取材。有名な観光地ではないのに年間を通して観光客が絶えないという街の様子をお届けします。お楽しみに!


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アルベルゴ・ディフーゾが成功しているテルモアの市街地

 

1.宮城県観光プロモーション

 

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東京シティエアターミナル2階「毎日が旅行博」Tour Expo 内 [東京都中央区日本橋箱崎町42-1]

 

主催 サンファンヴィレッジ

協力 東京シティ・エアターミナル東京空港交通宮城県経済商工観光部観光課宮城県観光連盟みらいサポート石巻宮城県石巻市大崎市石巻観光連盟峩々温泉東鳴子温泉旅館大沼良葉東部JF宮城県石巻湾支所万石浦鮮かき工場カイタクビヨンド牡鹿の学校

 

 

牡蠣のまち 石巻へ!!

 

 石巻は牡蠣の産地として有名ですが、2018年4月下旬に同じ宮城県の南三陸町戸倉地区に続き、石巻地区、石巻市東部、石巻湾の3支所が国内2例目となるASC*国際認証を取得しました。ASC国際認証というのは、WWFが国際的な海洋保全活動の一環として、天然の水産物ではなく、養殖による水産物を、海の自然や資源を守って獲られた持続可能な水産物(シーフード)として認証する仕組みです。

*「ASC(Aquaculture Stewardship Council:水産養殖管理協議会)」

イシノマキマンTwitter 【https://twitter.com/ishinomakiman

*詳しくは石巻観光協会のホームページでご覧いただけます。

 

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