<時間旅行>戦前日本の日記

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昭和1

年: 石川県金沢市近辺の工場で働いている20代男性。前日に起こった二二六事件で東京はこの日も戒厳令下にあった。1936年2月27日

diary2016.2.27


ーーーー 午前、帳簿〆切午後鋳送○○(?)工場に居る。 昨日午前5時頃東京一部管区(?)青年将校の決行せる襲撃事件。新聞号外は発禁を喰いラヂオはニュース中断、帝都に戒厳令下されて人々極度に不安に達す。流言区々吾人の知る処に非ず。而るに昨夜ラヂオを以て官庁として発表せる事件の概要は陸軍省公表をして青年将校襲撃の大官名及びその死傷並びに彼等の発表せる事。趣意を簡単に示せるもの。内務省発表 人心の動揺並びに各地方の状況報告、東京警備指令発令の帝都戒厳令に関する声明、海軍省発表の第一第二艦隊移動状況並びに横須賀守備艦の東京港警備状況のみ。 事件の真相固々禁ぜられて号外以外の紙面はその片鱗すら見出し得ず。大官の暗殺は愈々最近の流行の形になった感なきにしも非ず。殊更に五.一五事件以来軍部の動静平穏ならず、永田事件公判中の出来事なれば之に関係せざる事なからん。 唯、昭和維新を叫ぶ少壮過激の士の盲動として看過する事は許されない。政府は速やかに一切の真相を国民に開陳し以て国家大本の再建設に専念。以て今後かかる不祥事のボッ発せざる様留意す可きではないだろうか。 もし之の事件を以て我が政○(?)に或は国是に或種の変動を来す事あらば之こそ昭和維新にして彼等は大業の捨石たる人物であらんか。 ーーーーー


二二六事件で東京はこの日も戒厳令下にあった。ラジオや新聞の報道なども非常に限られてたものであり、人々は不安な時を過ごしていたようだ。日記を書いた男性は「大官の暗殺は愈々最近の流行の形になった感なきにしも非ず」と記しているが、まさに当時は、政治家や軍部高官らを襲撃する事件が相次いでいた。 昭和7年の5月15日に武装した海軍の青年将校らが総理大臣官邸に乱入し、当時の総理大臣犬養毅を殺害。さらには他の大臣官邸、政党本部、警視庁、変電所、三菱銀行などを同時に襲い軍による政権奪取を狙ったのが、文中にもある五.一五事件。 さらには文中で永田事件として触れられている、前年の昭和10年8月12日には、陸軍中佐が、対立する永田鉄山軍務局長を、陸軍省において白昼斬殺した一件。他にも、昭和8年には右翼によるクーデター計画が発覚した神兵隊事件、昭和9年には陸軍士官学校を起こったクーデター未遂事件など、同様の事件は枚挙に暇が無い。 そんな社会情勢をうけて二二六事件は起こった。日記を書いた男性は、事件を起こした青年将校たちと同世代であり、昭和維新を叫ぶ彼らに色々と想うところがあったようだ。


【昭和11年の出来事】 1月 日本がロンドン海軍軍縮会議から脱退  2月 全日本職業野球聯盟設立  2月 二・二六事件勃発し東京市に戒厳令布告(7月まで)  5月 阿部定事件  8月 ベルリンオリンピック開幕  9月 ソ連にてスターリンの粛清が始まる

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